第11章「2012年の混乱」(2)
水曜日夜のギリシャ緊縮財政案は、大方の予想通り無事に議会を通過した。 市場では、株、為替、商品いずれもショートカバー優勢の流れとなり、 日経平均は9800円台を回復した。 翌日の関連法案も無事に議会を通過したため、 金曜日の前場では株価が一段と上昇、9900円まで買われている。 SQ1週間前であり、C975、C100を踏まされた参加者も多いはずだ。 「俺は、近めのコール売りは性に合わんな...」 石黒の最近のポジションは、11000円以上の8,9月のコールレシオである。 特に8月コールの11000円以上は、この程度の上昇でもほとんど上昇しない。 7月SQが近づくと、大外の翌月コールは相場が上昇しても、反応が鈍くなる。 従ってレシオの形にしておけば、よほどの急騰が来ない限りまず負けることはない。 7月SQを過ぎれば、1000円以上外側なら2:-5でも安全圏に近く、 8月SQまで2週間を切ると1:-3まで売り増すことになる。 この頃には、既にデルタはロングに傾いているので、上方向へのヘッジにも使える。 ただし、あまりに早い時期に外側が剥がれ落ちると、 状況次第だが、コールバックへ転換することもある。 先週も、7C975-7C100の-1:3というコールバックを作ってみたのだが、 外側の反応が悪く、早々に落としてしまった。 いつもながら、コールバックは難しいと感じる。 9月外側は、この時期は1:-2として、8月SQが見えてくる頃2:-5に売り増す予定である。 半ばセオリー化された手順だが、安値圏で急騰に備えなければならない時以外、 かなり成績は安定している。 「ユーロは、もう一波乱ありそうだな。」 ギリシャも緊縮財政案通りに上手く行くかは未知数である。 そもそも、今回揉めた理由は、独の南欧諸国に対する不信感といっても良い。 "口先だけで、我慢などできない連中"に対して、資金を援助しても、 結局都合の良いように使われてしまい、再度泣き付かれるのが見えている、ということだ。 「ユーロ救済基金のシステムを、もう一度洗い直してみる必要がありそうだ...」 ユーロ救済基金7500億の内訳は、 ①EU:600億ユーロ ②ユーロ圏:4400億ユーロ、 ③IMF:2500億ユーロ となっている。この内緊急措置で使われるのが①と③である。 問題は②のユーロ圏4400億ユーロであり、ECBへの出資比率に合わせて、 独:27% 仏:20% 伊:18% スペイン:12% : ギリシャ2.8% : と債務保証額が決められている。 余力のない国まで、負担があること自体問題であるが、 昨年の設立時には、とりあえず市場が好感した。 しかし、ギリシャは既に1100億ユーロ、アイルランド850億ユーロ、 ポルトガル780億ユーロ、と使ってしまった。 今回のギリシャ問題と次に出てくる支出を合わせると、 2年以内に既に、過半数使い果たすことになる。 それでも、各国の景気が持ち直せば、当面は一段落するのだろうが、3月時点の失業率は、 アイルランド13.2% スペイン19.1% イタリア8.8% ポルトガル10.5% : と依然高水準でV字回復には程遠い状況だ。 ポルトガルの国債利回りは、依然12%程度で高止まり状態。 ギリシャ問題は当面片付いたと、利上げを期待する向きがユーロ買いに動いているようだが、 国内景気が脆弱で金利が高止まり状態の南欧諸国が、 果たして利上げに耐えられるのだろうか、との疑念もぬぐえない。 ギリシャでは、観光産業がGDP約30兆円の2割近くを占めるが、 ストライキの影響で、今年の落ち込みが必至となった。 既に"ユーロ救済基金は2倍規模にすべき"との議論も出てきている。 「このまま、無事に収まるはずがない...」 とはいえ、目先の相場はショートカバーも絡んで、上を目指す可能性が高まっている。 専門家では、日経平均12000円という強気なコメントを出す者も現れた。 事態が落ち着きかけると、必ずと言って良いほど過剰に反応する輩が現れる。 「こんな連中は、全く当てにならない。」 仲原からskypeがかかってきた。 「大和のネット専用口座のオプション売りは、証拠金計算が完全なSPANじゃないようですね。」 「スプレッドが相殺されないと言うことだろう。」 「他の証券のMやJと同じですね。まあ、単なる売り屋には影響ないでしょうけど。」 「震災後にプット売り連中が飛ばされたことで、立替金が発生したからな。 証券会社もリスク管理が課題なんだろう。」 「その点では最大手のSがスマートですね。 客の証拠金やポジション状態で、枠を減らす可能性があるらしいです。」 「証拠金ぎりぎりで、プットを売りまくっている連中は減らされると言うことか。」 「多分、そうでしょう。親切にも"プット売りはそれより安いものを買うことでリスクが減少します。" とのコメントも付いていましたよ。」 今の状態では、同じ10円のオプションを売るのでは、コールの方が遥かに証拠金が高い。 証拠金は少ないが日銭を稼ぎたい向きは、危険を感じながらプット売りに手を出すことになる。 しかし、S社の連絡を受け取れば、 「売りを減らすか、ヘッジに大外を買う動きも出そうだな。」 「まあ、そうでしょうね。最近8Pの外側が割高なのは、その影響かも知れませんね。」 「とすれば、これは長い間続くことになるな。」 「私の方は、8Pレシオを作り始めましたよ。ヘッジは9Pバックやバタフライですが。」 「大外の行使価格500円差ならば、2:-3でも大した影響はなさそうだな。」 「シミュレーションは1000円安、IV25%UPで、これで損が出ないなら大丈夫でしょう。」 <免責に関して> 当掲載内容には十分注意を払っておりますが、 内容の誤り及び情報に基づいて被ったいかなるトラブル、 損失、損害については、当方は一切の責任を負いません。 ご利用は、自己の責任において行われるものとし、 当方は一切の責任を負いません。 なお、掲載した情報は予告なく変更、中断、中止することがあります。 予めご了承ください。 にほんブログ村
by nkmrnkmr
| 2011-07-01 10:41
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