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第15章「南欧の混乱再び(3)」

日銀政策決定会合、ギリシャ選挙、FOMC、ユーロ・EU財務省会合
と続いたイベントは、結局大した変動もなく終わった。
ギリシャ選挙前盛り上がったIVも大きく低下、
callは2/14以前の17%程度まで落ちている。
「結局、振り出しに戻っただけか...」
しかし、2月と異なるのは、
①日銀が動くようになったこと、
②米中の景気減速懸念、
③欧州情勢の変化、
④企業業績見通しがやや明るいこと(為替変動あるが)、
であり、今後も材料に振られる展開には変わりない。
ただし、欧州では仏選挙の結果、
成長にも配慮した政策への調整につながり、
縮小均衡路線が避けられそうな予感はある。
日経平均のPBRは1以下で、BPS(1株当り純資産)は9300円程度だ。
人気のない日本株だが、実はBPSは徐々に上昇しており、
BPS以下となるのはリーマンショック後と、昨年後半と今回位しかない。
好材料が出るなら、一気に9000円台後半まで
突き抜ける可能性も、考える方が良いのだろう。
しかし、目先は米中景気見通しの悪さや南欧問題の不透明さから、
今年の夏場はせいぜい9000円台前半までと見ている。
更に消費税増税が企業業績に与える影響もありそうで、
日本株が外国株より、大きくアウトパフォームする可能性は低そうだ。

その日本株だが、水曜日の午後あたりから、
先物買いが断続的に入り、これと言った材料の無い中で、
スルスルと8800円台後半まで上昇してきた。
「月末のドレッシングだな...」
6月末は半期毎の評価に該当するファンドも多く、
対ベンチマークで微妙に負けていれば、
残りのキャッシュを使って上値を買いに来る。
日本株で言えばベンチマークのTOPIXに比べて勝つか負けるかで、
ファンドの評価がガラリと変わり、場合によっては資産を引き上げられ、
ファンドマネージャーの首が飛ぶ可能性もあるわけだ。
そのため、極端な言い方をすると、月末の株価は
立場のかかった真剣勝負(残金で買い上がるだけだが)となる。
大館から電話があった。
「イベントが無事終了したけど、IVは思いっきり落ちたねえ。
 今は、取りたいポジションは残ってないよ。」
「そうだな。せいぜい6/18の寄付きで、組めたかどうかで決まったな。」
「こんなIVでPUTを売るようじゃ、どうしようもないしね。」
「9000円前後で膠着すると見て、7C900売りのカレンダー系か...」
「そうだね。米国株は13000を突き抜けそうにもないし、
今の状況でドル円が85円を目指すとも考えられない。」
「7月の追加緩和を織り込んで、9250円まで見ておくか。」

仲原の予想したとおり、日経平均は木曜日も予想以上の強さで、
特に買い材料もないまま、8900円近くまで上がってきた。
先週以降、低下傾向の続いたIVもさすがに上昇、
特にcall側の買戻しが先行したようだ。
ESで買い材料が出れば「一気に9000円まで行くのか...」と思われたが、
欧州時間にいきなりユーロ円が98円台に急落、
ネガティブ材料の出たバークレイズが暴落した。
首脳会議も、財政統合までは全く見えず、
市場にポジティブな材料は出そうにない。
「欧州は、まだまだ不安定だな...」
しかし、昨年からのユーロ圏国債利回りを眺めると、
イタリア、スペインは利回りが大きく上昇しているが、
他はポルトガルも含めて低下している。
以下は、10年国債利回りの比較。
国名 6/28 1年前
ドイツ 1.51 2.94%
フィンランド1.87 3.16
オランダ 2.06 3.27
オーストリア 2.38 3.44
フランス 2.66 3.34
ベルギー 3.11 4.19
イタリア 6.17 4.92
スペイン 6.90 5.61
ポルトガル9.88 12.39

こうして見ると、金融機関やファンド勢による
国債間の売り買いのトレーディングに過ぎないとも思う。
独国債も1.5%まで落ちてきたが、ユーロでの資金運用となると
消去法で独国債になるので仕方がない。
年初だったか、欧州系ファンド運用者のコメントを読んだことがある。
「ユーロは破綻して、独国債も暴落してしまう!」
しかし、ECBによるQE2以上の規模ともいえる資金供給オペで、
国債価格は上昇(利回りは低下)することになった。
米国もそうだが、中央銀行が紙幣を大量に発行して、
自国の国債を買い続けることは、通貨暴落の危険性はあるものの、
そこさえクリアできれば、緊縮財政政策より格段の効果がある。
金融恐慌専門家のバーナンキには、至極当然の理屈なのだが、
日本の財務省、日銀は二の足を踏んでいる。
彼らも本当はやりたくないのだろうが、
米国・ユーロがいずれも大量の資金供給を実施する以上、
需給の面から円高となるのは確実なので、
やむなく国債買い金額を増やし続けているのだろう。
相場は、昨夜の円高と欧米市場下落で8800円を割り込んだものの、
本日は買い材料がないにもかかわらず、再度8850円まで上昇してきた。
「ドレッシングに過ぎないのだろうが...」
次週は、9000円越えがあるのだろうか。


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by nkmrnkmr | 2012-06-29 10:54 | オプション小説
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