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第15章「南欧の混乱再び(4)」

「結局は、昨年8月以降と同様な展開か...」
心配されたスペイン10年国債利回りは、6%台後半で推移している。
EFSFによるユーロ圏銀行への直接資本注入は、
市場にはポジティブと受け止められたが、
銀行監督の統一や共同債発行までは踏み込まれず、
今後も不透明感が漂う。
代わって市場の注目を集めるのは、
企業の4-6月期決算や米国、中国の経済指標だ。
経済指標については、悪ければ追加金融緩和期待が強まるため、
株式市場には大きなマイナスにはならないだろう。
しかし、企業業績が悪いと、株価はダイレクトに反応する。
今期の日経平均の予想EPSは750円程度、
株価9000円ではPER=12倍で、
世界標準から見ると若干割安という評価なのだが、
前提はドル円80円、ユーロ円100円である。
世界景気が下振れすれば、当然予想EPSは低下、
9000円が割安とも言えなくなる。
PBRは0.95程度で、こちらも割安の評価なのだが、
ソニー、パナソニック、シャープの業績を見て分かるとおり、
今期以降の業績も予断を許さない。
赤字企業では、PBRが1以下でも割安ではなく、
純資産が減り続ければ、最終的に株価がBPSに一致する可能性もある。
先行きが不透明な企業の株価が
BPSを大きく割り込んでいるのはそのためだ。

一方で、業績がよろしくない銘柄は、外人はまず買ってこない。
外人シェアは既に7割まで上昇しており、
国内投資家は依然として日本株には慎重な姿勢だ。
PBRが0.5以下の銘柄も多く存在するが、
市場から全く放置されていると言って良いだろう。
そんな銘柄群が買われるケースは、
①自社株買い、
②M&A(MBO、親会社による100%子会社化含む)、
③突然の業績上方修正(特に復興需要)。
①では、キャッシュ・リッチでPBRが1を大きく割り込み、
黒字が継続している企業が多い。
②は、大企業の子会社やオーナー系が対象だろう。
③では、今回では復興需要に関連する企業が多く、
建設やプラント系等、ここ数年は日の目を見なかった企業群だ。
なお、個人投資家には、優待利回りの高い銘柄も人気があるが、
業績の伴っていない企業は、優待を削減する方向にある。
EPS/株価<配当利回り+優待利回り、
となる銘柄は要注意だろう。
初心者には、配当利回りだけを見る者もいるが、
当然ながら無理な配当をする企業(オーナー系等)も多い。
一般に配当性向(1株配当/EPS)では、高成長企業で0-30%、
低成長企業で30-70%程度と見て良い。
EPSのほとんどを配当に回す企業には、
増配の可能性は極めて低い。

藤木から電話があった。
「夏ばて相場でっか。動かなくなりましたなあ。」
「米国株は好調ですけどね。もっとも、
 4-6業績が心配されたほど悪くないので、
 単なる買戻しだと思いますが。」
「欧州も、少し落ち着いた感じですが、ユーロは弱いですなあ。」
「追加利下げや、追加資金供給への期待があるんでしょうね。
 このまま収まるとは、誰も思っていないでしょう。」
「しかし、LIBOR問題や、増資インサイダーは根が深そうですな。」
「意外と、横のつながりは深いですからね。」
「前にも多かったが、大掛かりな増資の場合、
 海外投資家探しにロードショーを、やるやないですか。
 発行体の役員を連れて。
 それを、目ざとい連中に見つかると、"すわ増資か"となります。
 発行企業の役員の顔がばれると、銘柄も特定されますな。」
「その場合、法的にはインサイダーには該当しないのでしょうね。」
「そうです。日本の証券会社の人間が、
 企業の役員を連れて海外の投資家を訪問しただけで、
 増資とは断言できませんからな。」
「既存株主から海外投資家が買い取るだけという可能性もありますね。」
「ファンド連中も、その場は断って別のファンドにリークして
 マージンをせしめる輩もいるようですな。」

相場は、米国株が予想以上に強く、NYダウは13000の目前に迫った。
欧米いずれも追加金融緩和の期待が強く、対円で下落が進んでいる。
ドル円は78円台、ユーロ円は96円台だ。
円高が進み、日本株が欧米ほど買われない現象は、2年前ともダブる。
しかし、昨日は豪ドルが82円、WTIは92ドル台まで上昇しており、
徐々にリスクオンの動きが広がっていると、考えられなくもない。
とはいえ、先進国の長期金利はいずれも2%を大きく割り込んでいる。
長期金利と経済成長率は、ほぼパラレルであり、
どの国も1%台の経済成長しか見込めそうにない。
各国10年国債利回り
米国 1.50%
ドイツ 1.22
イタリア 5.99
スペイン 6.97
英国 1.52
日本 0.75
目を引くのが7%近いスペイン、1%割れの日本だが、
米国の1.5%も過去前例がないほどの低さである。
「米国の繁栄は、今後も続くのだろうか...」


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by nkmrnkmr | 2012-07-20 10:43 | オプション小説
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