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派遣トレーダー2014(8)

先週末のG20は、量的緩和縮小に踏み切った米国と
自国からの資金流出に悩む新興国が対立する見方もあった。
が、事務方の根回しどおり前向きな声明を発表して閉幕した。
「GDP成長率2%上昇!」といった景気の良い数字も出たが、
「ではどうするのか!」となると具体的には何も出ていない。
セレモニー的な会議の終わりに
「では、皆で頑張りましょう」といって終了するのと似ていた。
中身は意外に乏しい。
「なんだよ。学級会の終わりと同じじゃねか......」
日曜日の夕方、例の喫茶店に向かった。
新聞や雑誌をあさると依然として証券界は強気だ。
大手証券は3月末16000円との見方を変えていない。
「どうも、腑に落ちないな......」
14000円まで下がったのは欧州大手の先物売りが原因で、
彼らが買い戻した以上、新興国通貨が再度売られない限りは
日本株も崩れないのだろう。
強気筋の根拠は「米国指標は雪の影響」「日銀は追加緩和を実施」
一方で、弱気筋は「消費税増税の影響大」「米中の景気は良くない」
強弱感が対立しているから、先物主導の荒い動きなのか。
「方向感なしか......」それはそれで仕方がない。
現物は逆張りに徹して、細かく稼ぐしかなさそうだ。
扉が開き、田村と浅原が入ってきた。
「何だ、またあんたか」二人は隣のテーブルに座った。
少しの間小声で話した後、
浅原が「あんちゃん、俺は原発に行くことになったよ」
「そうですか」
「そっちの方が、金が良いからな」
「お元気で......」

浅原が出て行き、田村が残った。
「田村さん、浅原のおやじ何とかならなかったんですか」
「金の問題だから仕方がない。奴等が待ってくれる訳じゃないし」
「可哀想な気もします......」
「金の問題は本人次第だ」
「そうですね」
「好意で待ったり、貸してくれる奴はいないと思う方がいい」
「......」
先物や信用取引で追証に陥ることがある。
しかし自己責任であり、自業自得でもある。
本人の管理の甘さが原因であるとしかいいようがない。
「田村さんは、今週どうなると思いますか」
余計なことと思いながら相場感を聞いてみた。
「方向感は出ないんじゃないか」
「そうですね......」
「ただし、大口の先物売買は出るだろうな。
 CTA系は昨年来パフォーマンスが良くない。1月も大やられだった」
「だからリスクを取って振り回すと......」
「そんなところか」
家に帰って欧州大手金融機関が公表するヘッジファンドインデックスを見た。
CTA系は12月、1月もマイナスだった。
ここらで利益を出さないと、半期のパフォーマンスが苦しくなる。
他社比で成績が悪くなると、資金を引き上げられる可能性も高い。
月曜日は、大した材料もないのに、先物中心に上下に振り回された。
「やはり、先物主導か......」
為替相場が、後から恐々付いて行くような流れだった。
これではプロ連中も勝つのは難しいようだ。
上昇時も一部指数銘柄、材料のある銘柄が値を飛ばしているだけで、
全体的にリスクオンとは言いがたい。
商いも大したことはなかった。

火曜日、水曜日、木曜日と先物は
14800円から15000円台を行ったり来たりだ。
ドル円は102円台の前半中心で、こちらも方向感は出ていない。
材料のない中で、先物だけがスルスルと300円程度動いていた。
手口では大口プレイヤーは売買がほぼ均衡だ。
ということは、日計りが中心ということでもある。
月曜日などは、短期ショート筋を見越して踏みあげた可能性があった。
追従してきた短期の買い手は、最後の下げで見事に投げさせられた。
水曜日、木曜日も良く分からない動きであり、
こんな日は相場をやらない方がいい。
不気味なのは、中小型の個人好みの優良株が上がらないことだ。
先物に振り回される一方で、現物売りを進めている勢力が存在する。
3月10日の引き落としまで、2週間を切っているが、
今が買いのタイミングとも思えない。
木曜日、家に帰ろうとすると金井が声をかけてきた。
「なかなか戻らないすねえ......」
「戻ってはいるが信用できねえな......」
「でも株は強気の人が多いじゃないですか」
「証券会社の連中は強気しか言わないよ」
「外資のD証券にいたお偉方なんか、2万円どころか
 史上最高値まで吹っ飛ぶって言ってますよ」
「そう思うなら、自分で買えばいいじゃないの」
「俺は、株は分からないから......」
一部の人間からは、日経平均が4万円との声も出ていた。
予想は勝手だが、彼らが責任を取ることはなく、投資は自己責任だ。
上がらなかった時、彼等は政府や日銀のせいにするに違いない。

3日間動きの速いボックスだったが、
木曜日の夜間に一気に14600円台まで崩れた。
ウクライナ情勢緊迫化が原因だったが、
欧州株の下落はせいぜい1%台で、日経だけが突出して下げた。
世界の短期マネーが日本株に集まっているからだ。
「崩れるか......」
しかし、米国市場はイエレン議長の発言を好感し、プラスで引けた。
S&Pは高値を更新。日経平均は14900円台に上昇。
ちょっとした材料に振り回されるのは毎度のことだ。
チャート的にも売買代金を見ても強気になれないが、
過去と同様3月末にかけてラリーとなる可能性は残る。
「少し拾っておくか......」
バリュー株を少々仕事前に指値を出した。
朝刊の3面記事を見ると「津波対策」として文部科学省は
学校設備整備指針を出すらしい。
東北を流れる大きな川の周辺は、津波で大きな損害を被っていた。
建物が流され大勢の人が亡くなった。
中には、100人近い小学生が亡くなった大川小学校の例もある。
先生達がどうしようか迷っている間、校庭に1時間近く待たされ、
ようやく避難し始めたところを大津波が襲った。
「なぜ、もっと早く高いところに避難しないんだ」
子供を亡くした親が怒るのも無理はない。
逃げ残った唯一の教師は、教育委員会によって隔離され、
誰も面会できないらしい。
「組織的な隠蔽」と受取られても仕方がなかった。
この話は、地元の誰もが知っていた。
あたふたする先生を、ある子供が
「早く逃げないと死ぬよ!」と叱りつけていたという。
決断できない大人は、何処にでもいるものだ。


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by nkmrnkmr | 2014-02-28 10:16 | 雑感
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