派遣トレーダー2015(2)

2015年最初の週は、世界的に株価は下落した。
日経平均も夜間で一時16500円程度まで売られた。
今年は利益の出た投資家も多かったのか、
株価が上がらなかった銘柄には
12月の最終まで税金対策の売りが続いたようだ。
押し目買いの好機といえばそうだが、
決算が今ひとつで買い材料の出なかった銘柄が多いので、
ちょっと手を出しづらかった。オプションを始めてから、
証拠金に余裕のある時だけ現物に手を出しているが、
大型株は動かないので、もっぱら中小型株だ。
不動産の「パラカ」、金融の「あかつきF」あたりを仕込んだ。
オプションは、年明けは調整が出ると踏んで2Cと3Cのレシオ。
下は14000円台のカレンダー系とした。
海外で何か起これば16000円台前半まで突っ込む場面もあるが、
ECBや日銀も控えているので、ショート筋の先物買戻しも強力だろう。
為替もリスクオフの動きでドル円、高金利通貨も調整気味だ。
IMMの通貨先物ポジションを見ても、まだまだドル買いが溜まっている。
原油急落で商品系ファンドの閉鎖がささやかれている。
利益の出たポジションで埋め合わせをすることもあろう。

1月9日は米国雇用統計の発表だ。
夕方現場からマイクロバスで事務所に戻り、
さっさと着替えを終えて帰ろうとした時に、
たまに世間話をする老人の立石から声をかけられた。
「おう、神谷のあんちゃん。ちょっと付き合わねえかい」
帰りがけに地元の酒場で飲もうということらしい。
そばには20代だろうか、若い茶髪の男がたたずんでいた。
「3人でですか」
「ああそうだ。俺がおごるから1時間だけでもどうだい」
「まあ、1時間程度であれば......」
どうせ、一人で飯を食っても30分はかかる。
立石に付き合うことにした。
(雇用統計発表の10:30には帰れるだろう......)
連れ立って安酒場に向かう途中で、
「俺、三浦っていいます」若い男が声をかけてきた。
端正な顔で、一見思慮深いようにも見えた。
「神谷です。立石さんとは現場でたまに話す程度だけど......」
「俺もそうです。アパートに帰ってもコンビニの飯を食うだけですし......」
「なんで、この仕事やってんだい」
「ちょっと金が必要でして......」
若いなりに金が必要でもあるのだろう。
「でも、三浦のあんちゃんはしっかりしてるぜ。
 仕事が遅いやつの手伝いもするし」
立石が褒めた。
「早く終われば、早く帰れますから」若い男は謙虚だった。
その安い飲み屋は、駅の近くにあった。
周囲は寂れたパチンコやスナックもあった。
「まあ、ここの3人も何かの縁だ。乾杯しよう」立石が声を上げた。
狭くて小汚い店内には、同じような現場の労働者が何組かいた。

飲んでいると、つい仕事の話になる。
「この復興事業の現場のおかげで、仕事にあぶれずに済んだよ」
立石には元の仕事より良さそうだ。
「まだまだ仕事は続きそうですね」
海岸沿いの復興事業は相当長く続きそうで、
労働者が増えたため地元まで潤っているようだ。
居酒屋は8時前に切り上げた。
帰ろうとすると立石が
「もう1軒いいじゃないか」
「はあ、ちょっと取引があるので......」
「株かなんかやってんだったな」
「ほんの1杯だけなら」
10時までなら付き合えそうだった。
場末の安いスナックは驚いたことに3人入って一杯になった。
「飲み屋も繁盛していますね」三浦が呆れたようにつぶやいた。
現場の連中にとって、夜は酒を飲むことが何よりの楽しみだ。
「東京のババアまで出張してるって話だ」
東京で相手にされなくなった大年増まで、流れてきているらしい。
(これも復興需要のおかげってか......)
店内にいた2人のホステスは、どう見ても50代だろう。
その内の派手な服を着た方が、立石のお気に入りらしい。
「この姉さんは、昔歌舞伎町で働いてたんだってよ」
「よしてよ。昔の話なんだから......」
歳をとっても、目には妙に媚びた光があった。
現場のおっさん連中は50~60代が多い。
店の常連にするくらい、大して難しくないだろう。
「ここでしばらく働くんですか」女に聞いてみた。
「もう少し。でも地震や津波は怖いわねえ」
「大丈夫さ。今回でかいのが来たから、あと100年は来ないさ」
立石が胸を張った。

10時過ぎにアパートに戻り、急いでPCを立ち上げた。
指標発表前で市場には緊張感も漂っている。
10時半に数字が出た。失業率5.6%、新規就業者数も予想以上だ。
市場はすぐさまドル高、株高に振れた。
日経平均先物は100円程度上昇した。
「こんなものか......」
しばらく経つと雇用統計の詳しい内容が出てくる。
時間当たり賃金が伸びないのは気になるが
テクニカル要因ということもある。
それ以上動きそうになかったので、米国開始前に寝ることにした。
朝起きて、市場をチェックして驚いた。
予想外の大幅安であった。
「ここまで売られたとは......」
株価は史上最高値付近にある。多少の不安が出ても、
個人やファンド勢は利益確定に走りやすいのだろう。
特に今年から金融政策が大きく変わる。
日本と違い米国市場は金利に敏感だ。
金利が上昇すれば、資金は株から債券にシフトが進んでくる。
株価が一段と上昇するシナリオは、企業業績が好調である一方で、
低インフレで利上げが先送りとなるケースだけだ。
調べてみると、金融相場から業績相場へ順調に移行した例は少ない。
「とすれば、昨年以上の揺さぶりもありそうだ......」
日銀が追加緩和をすれば別だろうが、前回の5対4の可決を見ても、
早期に動く可能性は限りなくゼロだろう。
「3月限の20000円以上のコールは売りだな......」
裸売りはリスクが高いので、レシオを積み増すことにした。
万一の際は、高値で買い戻すか期近コール買いで凌ぐしかないが、
それを経験するのも悪くないと思った。


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by nkmrnkmr | 2015-01-16 10:38 | オプション小説
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