派遣トレーダー2015(4)

1月16日は日経平均は一時16500円台まで売り込まれた。
WTIは45ドル前後だ。仏テロの影響もあり
世界的なリスクオフの流れが続く。
週末は相変わらず寒かったが、なんとなく電車に乗ってみたくなった。
最寄り駅から海岸線をしばらく走った。
至る所に津波の傷跡が見えた。
地盤沈下で、ほとんど手付かずの場所もある。
このあたりも20mクラスの津波が襲った。
入江沿いに入ると、海岸沿いは建物が並んでいる。
津波が直撃しなかったため、被害は小さかったようだ。
終着の無人駅を降りると目の前には、その入江広がっていた。
海水は透明で、民家も多く立ち並んでいた。
「津波が直撃しなかったからだろうな......」
しかし、直撃した湾岸は悲惨だ。
この終着駅から、もうひとつ先の駅が終着駅だったのだが、
津波が凄まじく回復に至っていない。
土曜日の昼間だったが、バスでその駅跡まで行ってみた。
さっきの駅と違い海岸沿いは建物が少ない。
地盤沈下もあり、住民も再度の津波を恐れているようだった。
実はここから、さほど遠くない場所に原発が存在している。
従来から老朽化が進んでいるとの指摘もあり、
ビジネス誌の危険度ランクでも上位に位置していた。
しかし、福島原発以上の津波を受けながら、
電源もかろうじて通じたこともあり、事故には至らなかった。
その辺の事情は、立石から何度か聞かされた。
「ここの原発は、地元の電力会社が管轄でさ。
 地元に根付いてたんだ。顔も知ってたから
 津波の時も皆が原発に避難したんだよ」

「へえ、原発内に避難した人もいたんですか」
と俺が聞いたら、
「地元に根付いてたってことさ」
東電の管轄なら、そうは行かなかったという意見もあるようだ。
東電の福島とここの原発の違いは、設置場所の高度だった。
原発は冷却水を必要とするだけに、
海面から高いほど汲み上げるコストがかかる。
低ければコストは小さい。
福島第一はコストを嫌って低くしたとの説があった。
「難しいところだな......」
東電も上場企業である以上、いかに低コストで利益を上げるかが重要だ。
米国のように株主利益に反する行動を取ったならば、
株主代表訴訟を起こす外資系ファンドも出てくるだろう。
逆に安全性を僅かでも軽んじた施策が
今回のような大惨事に繋がるケースもある。
そこの最終駅付近を少し歩いてみたが、
海水の匂いのするひと気のない道路を、時折車が通るだけだった。
先程の入江と違い30mクラスの津波は凄まじい。
ここに住んでいた人達は、数十年は恐れて民家を建てないだろう。
気がめいったので、来る途中に電車から見えた旅館で
一風呂浴びることにした。入江沿いの旅館は眺めがよかった。
ダメもとで女将に「このスマホに出ている料金で泊まれますか」
と聞いてみた。
ちょっと戸惑ったようだったが、「ええ。歓迎しますよ」とのことだった。
そのまま部屋に案内してもらい、改めて海を眺めた。
入江という位置が幸いして、この海岸沿いは被害が少なかった。
ただし、目の前に見える山の奥は太平洋に面していて、津波が直撃した。
「紙一重か......」

晩飯は海の幸を堪能できた。
たまには1万いくらの贅沢くらい良いだろう。
生活費は切り詰めているし、
スマホも旧モデルに格安SIMを差して使っている。
2Gで月千円だけだ。
ネット証券のアプリをダウンロードすれば、
先物OPは一通り取引できる。
この分野は、ずいぶん進歩してきたが、
業者には先物OPがスマホに対応できていないところもあった。
その点、業界首位のSBIはさすがに便利なツールを開発している。
寄付き直後のデータの戻りが遅いのが難点だが......
来週は材料が多い。日銀、ECB、ギリシャ選挙がある。
日銀は、さすがに見送りだろう。
一部で原油安からサプライズの追加緩和を期待する声もあるが、
あくまで少数派だ。黒田総裁は当初から、
緩和は小出しにしないと断言している。
ECBはさすがに量的緩和を導入するだろう。
昨年の秋からそう言っていてきた。
ここで延期したら、債券市場は急落だろう。
その辺の機微は、GS出身のドラギ総裁自身が
良く分かっているはずだ。
問題は、買い入れ対象の国債をどう決めるか、
規模をどうするかの2点である。市場を知っている総裁なら、
失望売りを招く施策は避けるはずだ。
となれば、少なくとも追加緩和を期待させる内容になるのだろう。
ギリシャは不安要因ではあるが、最近の市場の動きでは、
伊・スペイン国債は大きく買われていて、
ギリシャは株も債券も蚊帳の外だった。
徐々に、ギリシャのユーロ退場まで織り込み始めているのだろう。
「とすれば、来週は株価は底入れか......」

次の週が始まった。
相変わらず寒い中を作業していたが、
相場は思った通り上昇してきた。
金曜日には日経平均は1万7500円を回復した。
仕込んでいた現物株も何とか利食えるまで上がってくれた。
そんな時、スマホを見ながら昼飯を食ってると
若造の三浦が寄ってきた。
「神谷さん、株に詳しいそうですね」
「立石のおっさんから聞いたのかい」
「ええ、まあ......」
「あんたは、やったことないのか」
「素人が感覚だけで、やった感じでした」
「少しは勉強しとかないと、勝てないぜ」
「そうですね。上がっていたIT銘柄を買って、大きくやられました」
「バリュエーションで株価が正当化できないような銘柄は、
 利食いと損切りを決めとかないと危ないな」
「調べたんですが、PEGレシオではまだ買えるって出てました」
PEGレシオは、決算毎に数値の大きく変化する指標だ。
かつてITバブルの時に、株価を正当化しようと
米国の専門家が編み出した。
計算式はPERをEPS成長率で割って求める。
PERが30倍で成長率が35%ならば30/35<1でまだ割安。
問題は成長が鈍化した時で、
PEGレシオを背景に買われた銘柄は、間違いなく売られる。
「まず財務諸表の勉強から始めなよ」
「難しそうですね」
「大したことないよ。使う項目は限られるし」
表に出るEPSでは、今期予想にしても大きな特別損益が含まれたり、
正と負ののれん償却や貸倒引当金等の影響が大きかったりする。
情報会社によっても予想は異なる。
「要は、EPSを自分で計算してみることだよ」


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by nkmrnkmr | 2015-01-30 10:28 | オプション小説
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