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派遣トレーダー2015(6)

2月に入った。
相場はギリシャ不安、原油安に揺さぶられながらも
ユーロの量的緩和から株式相場は底堅い動きとなった。
イスラム国の人質事件が日本を揺るがしていた。
結局、二人は殺害されたようだ。
イスラム国を取り巻く情勢は複雑だ。一見すると、
アルカイダ系の過激派が勝手に国を名乗っているようだが、
背景はそう簡単ではない。
フセイン政権が崩壊した後、米国の作ったイラク暫定政権は
人口が最大のシーア派主導である。
スンニ派、クルド人は脇に追いやられた。
戦闘で捕まったアルカイダ系(スンニ派)の過激派と
旧フセイン政権の軍・官僚幹部が収容所で親交を持ち、
政治的に空白地帯となったイラク北部とシリア北部を武力で制圧し、
国を名乗っているのが真相らしい。
インターネットを使ったリクルーティングや軍事訓練、
国内統治も旧イラク高官の主導によるものだろう。
「日本への脅しも、彼らの知恵によるものか......」
平和ボケした国民がこのような脅しに弱いということは、
日本を知る旧フセイン政権の官僚の知恵だろう。
相場や国際情勢に詳しい田村によると、
「奴らの攻撃対象は、あくまで米英だよ」
フセイン政権を倒して、アルカイダ幹部を殺害した国が、
あくまでテロの主要な対象なのだろう。
「おどおどして海外旅行をためらう日本人は、ピエロのようなもんさ......」
とのメールが返ってきた。
「今後、どうなりますかね」
「連合軍+クルド人とイスラム国の争いだ。
それにシーア派のイランも連合国に加わってるな」
昨年末には、イランがイスラム国を空爆した。

相場の方は、イスラム国問題はどこ吹く風で、
17500円中心の堅調な展開となった。
10-12月期の決算発表が続出しているが、
業績が予想以上の好数値となった銘柄が、
急騰する反面で、予想以下の銘柄は大きく下げる場面もあった。
原油安・資源安で商社株、資源株には逆風だ。
また、日本国債利回りは一時0.20%を割り込んだが、
0.40%近くに上昇した。追加緩和以降、
大きく買われたREITは、まとまった売り物が出た。
中には高値から2割以上下がった銘柄もあった。
それらREITは少し拾うことにした。
「JGBの利回りは、これ以上上がらねえよ......」
同僚の三浦も株価が気になるようで、ことある毎に話しかけてきた。
「堅実なのはPBRですかね」
確かにそれはある。しかし、B/Sに全てが
正確に時価評価で記載されているとは言い難い。
「土地や建物、のれん、繰延税金資産等の評価だな。
これで大きくBPSが変わる可能性があるぜ」
「なるほど、もっと調べてみますよ」
「それと、保有している非上場の証券だな」
「含み益の可能性があるという訳ですか」
「そうだ。公開すると何十倍にもなるケースもあるよ」
最近では、アリババ株を持っていたソフトバンクがそうだ。
20億円で出資したアリババ株は、何と公開で4000倍になった。
ソフトバンクの含み益は、8兆円という膨大な額になった。
東証が大証と経営統合した時は、旧東証株を抱えていた証券会社は
軒並み数十億円規模の含み益が出て、
売却による特別利益を計上するケースが続出した。

木曜日と金曜日はトラックで北上川沿いの作業場に材木を運んだ。
運転した立石のおやじが
「せっかくだから、海沿いを走ってみるか」と遠回りをした。
例の温泉ホテルを過ぎ、山間の道を抜けると目の前に太平洋が広がる。
海沿いの集落は、津波の傷跡が残っている。
「この辺は、直撃されたんだよなあ」
住民も再度の襲来を懸念していて、
小高いところに新しい家が立っていた。
「ひでえもんだよなあ......」
このおやじも近くの出身だけに、身にしみているらしい。
「直ぐに逃げなかった人も、多かったんですよね」
「ああ、家族を心配して家に戻ったところをやられたとか。
そんな話がいっぱいあるよ」
地震がきたら、津波も来るから一目散に逃げろ!
が徹底されればとも思うが、肉親や親しい人が気になるのは仕方ない。
北上川の河口近くまで来た。
このあたりは壊滅的な打撃を受けていて、
田畑はさら地のままになっている。
「この信号の向こうに大川小学校があるよ」
せっかくなので建物まで行ってみた。
多くの花やお菓子が置かれている。
「子供達も可哀想になあ」
立石の親戚の子供も犠牲になったらしい。
「すぐに裏山に逃げりゃあいいものを......」
先生達は長い相談の上、ようやく避難し始めたところを津波が襲った。
「市の教育委員会は逃げまくってるそうじゃねえか」
市は釈明に追われたが、子供を失った親達の怒りは収まらない。
「結局、日本人は危機感が薄いんですよ」
長年平和が続くと、危機意識は遠のいてしまう。

金曜日の夕方、着替えていると三浦が話しかけてきた。
「このレベルから買っていいですかね」
「個別株は決算発表で動いているが、上値は追いたくないな」
「PBRの低い銘柄は少なくなってきましたね」
2012年冬以降、株価は上昇を続けているため、
割安株は確実に少なくなっていた。
PBRの低い銘柄もあるにはあるが、将来性に乏しい業種や、
資源安のあおりで売られた商社、ゼネコン・不動産の一部あたりだ。
「PERも見てるんですが、極端に低い銘柄はどうなんでしょう?」
「ネットの情報なら、今期予想PERと思うが、
特別利益まで含むものも多いからな」
「なるほど」
「それを除外した来期の予想PERで計算し直すんだな」
「やってみます」
「それと、優先株を発行している会社は、
それらを含めないPERが出ているケースが多いので要注意だな」
「はい、分かりました」
銀行株等で優先株を発行しているところが多い。
しかし、単に普通株だけでPERを出すと、極端にPERが低くなる。
ネットの書き込みでも「割安だ!」と出ているが、
実際は希薄化も含めた計算が必要だ。
そんな銘柄の買い材料は、優先株の買い戻し&消却である。
現金の支出を伴うので自己資本比率や流動比率は悪くなるが、
潜在株数が減るのでEPSは上昇する。
「分析したら買ってみて、値動きを追うことだよ」
個別のニュースや他社の材料で反応することもあるが、
辛抱強く時間をかけて待つことだと思う。
「バフェットの投資手法と同じさ」


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by nkmrnkmr | 2015-02-13 14:22 | オプション小説
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