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派遣トレーダー2015(7)

2月9日の週に入った。
週末の米国1月の雇用統計は、予想以上の強い数字となった。
11月と12月分も大幅な上昇修正で、
誰もが米国雇用情勢の強さを思い知ったようだ。
となれば、利上げの前倒し観測が出てくるのは避けられない。
株式市場も引けが近づくに連れて売りが出てきた。
NYダウは結局、前日比マイナスでの引けとなった。
しかし為替の方は素直にドル高に振れた。
日経平均も今週は18000円に近づいてきた。
「悪材料はあるが......」
ギリシャ問題、ウクライナ、イスラム国と懸念材料はあるにせよ、
大勢には影響がないということか。
あるいは、ショート筋の買戻しが優勢ということであろう。
「来期の業績予想は、強気が多いみたいですね......」
最近やけに株に詳しくなった三浦が言った。
「今のところは、今期の日経平均EPSは1100円強か。
 来期に10%近い増益を織り込むとするとEPSは1200円だ。
 PERが15倍として18000円か」
まあ、そんなところだろう。
18000円は特に割高でもなさそうだ。
「でも2007年の高値を本当に抜けますかね」
「相場を動かしているのは、外人と日銀・年金だからな。
 奴等が買ってくれば、節目なんか目じゃないさ」
「外人は、先物も大口で売買するみたいですね。
 手口を見てそう思います」
「そうだな。今は某欧州系のシェアが極端に高いしな」
「こんな奴等が大量に注文を出せば、どちらにも動きますね」
「そうだ。特に欧州系A社には要注意だよ」
「A社は時々、数千枚単位で傾けますね」

週末が近づくに連れて、日経平均も徐々に上がってきた。
翌週からは、ギリシャ問題が熱を帯びてくる。
左翼政権は、できれば債務を帳消しにして、
公務員の復職や年金の増額を目論んでいる。
「そんな虫のいい話が通るのか......」
世界中の誰もがそう思っているが、当事者は本気だ。
本気でそう言わなければ、選挙では勝てなかっただろう。
国民も本音は無理筋と分かっているが、
あわよくば独の譲歩を引き出せるかもしれないと、
期待しているのか。
2月10日の夜は、立石のおやじから飯に誘われた。
三浦も誘うと「ちょっと、予定がありますので」とかわされた。
2人で例の小汚い居酒屋に向かった。
立石の仮設暮らしも3年以上になった。
「他に移っても、仕事や家があるわけじゃあないしな......」
当分はここに留まるつもりらしい。
1時間程度飲み食いした後に、アパートに戻ろうと歩いていると、
三浦が背の高い痩せた男と歩いているのが見えた。
(めずらしいな)
この辺に知り合いがいるとは聞いていなかった。
2人は駅に向かい、別れ際に三浦が頭を下げるのが見えた。
(何者だろうか......)
休み明けの2月12日、ドル円が120円を突破したことで、
日経平均は18000円に達する動きとなった。
円安&日経平均買いはいつもの光景だが、
こういう場合は必ず裏にファンドの動きがある。
昨年来、グローバルマクロ型ファンドの運用成績は必ずしも良くない。
更に原油安で痛手を被ったファンドも多く、
どこかで巻き返しを図りたいところか。

三浦に10日の夜のことを聞いてみた。
「前から知ってる人で、実は借金があって......」
「その人から借りているのかい」
「ええ。でも意外と自分の事を買ってくれてるようで、
 一緒に仕事をやらないかと誘われてるんです」
「仕事って?」
「資産運用の手伝いです」
「金融機関の人でもなさそうだが......」
「ええ......実はサラ金の裏の運用部門みたいです」
「ちょっと危ない仕事じゃ......」
「ほとんど、大丈夫らしいですが」
「ほとんど、ってのも気になるな」
「自分の経歴じゃ真っ当な金融機関の運用は絶対無理ですし、
 やるのも手かなって、思ってます」
「こんな作業より、役に立つかもな」
甘くはないだろうが、運用の仕事で得るものもあるだろう。
この男自身で決めることだ。
「で、いつから始めるんだい」
「もう少し考えて見ますけど、4月からにしようかと......」
「本業でやるなら、オプションなんかも勉強するといいよ」
「ええ、先物やオプションも準備するつもりです」
「三浦がいなくなると、寂しくなるな」
「神谷さんはいつまで働くんですか」
「俺は、しばらく続くな」
「そうですか」
「昼間体を動かして、夕方以降に取引するのが、性に合ってるよ」
「その人が、もっと人を増やしたいとも言ってました」
「俺はいいよ。運用で人に指図されるのは好きじゃないから」
サラ金の裏で、どういう運用するのかは知らないが、
金融機関系のファンドマネージャーのように、
ベンチマークのTOPIX以上の利益率を目指すのだろうか。

日経平均は週末の13日にかけて、
18000円に突っかけたが弾き返された。
外人買いと個人の売りの攻防だろう。
当面は、2007年の高値18250円レベルが目標だが、
欧州情勢が落ち着いてくればあっさり抜ける可能性もありそうだ。
ユーロ財務相会合ではギリシャ問題が焦点となる。
同国政権としては、国民に公約した以上、
財政規律の枠組みを変える必要がある。
ユーロ側はギリシャの放漫財政が復活することへの危惧がある。
落とし所が見つかればいいが、
ギリシャが余りに強く主張するようだと、
独が拒否する可能性もある。
としても最終決着までには時間がかかりそうだ。
前政権でも、数ヶ月かかった。
その間、相場は一喜一憂するのだろう。
オプションは13日にSQを迎えた。
「ようやく、5月限が取引できるか......」
権利行使価格が125円刻みになって以来、
期先の板が極端に減った。マーケットメイクしていた外資系が、
銘柄の多さに根を上げたのか。
SQの週明け後は期近が売られ、
IVの比較的低い期先が買われるケースがある。
早速、4月売りと5月買いでポジションを組んでみた。
万一の急変動に備えて、3月クズでヘッジをした。
問題は現物株の方だった。
昔のようなユニクロトレードが復活すると、
バリュー系が放置されて非常にやりづらくなる。
今の相場は、上昇株と下落株が妙に入り乱れていて、
動きをつかむのが難しい。
「しかし、割安を丁寧に拾えば、大丈夫だろう」
低PBR、低PER中心に、買い増しを続けた。


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by nkmrnkmr | 2015-02-20 11:41 | オプション小説
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