カテゴリ:オプション小説( 83 )

派遣トレーダー2015(10)

3月2日の週に入った。
週末に利食いに押された相場は18800円台中心の動きだ。
先高観は依然強いようだが、騰落レシオも高く、
短期調整入りしてもおかしくはない。
翌日に大きなニュースが飛び込んだ。
「シャープは、また経営難か......」
スマホ向けパネルの単価下落と、
ジャパンディスプレイに顧客を奪われたことで、
今期は1000億円規模の最終赤字になるようだ。
3Q決算では自己資本は2400億円弱、純損失は72億円。
最終的には、自己資本は1500億円程度に目減りしそうだ。
自己資本比率は6%台まで下がるだろう。
S&Pは格付をCCCに下げた。
経営健全性は赤信号だ。報道では、
大手銀の保有する債務の株式化(デットエクイティスワップ)も、
検討するようだ。これは借金を株式に換える手続きを意味する。
自己資本は厚くなるが、潜在株数が増加しEPSは低下する。
当然、株価にはマイナスとなる。
「大丈夫か、この会社は」誰もがそう思っただろう。
かつての日本を代表する優良企業も韓国勢や、
中国勢に押され、時価総額は4000億円前後まで目減りした。
かのアップルといえば時価総額は80兆円台に膨らんで世界最大だ。
200倍まで差がつけば、もはや相手にならない。
技術力に差はないかもしれないが、マーケッティング能力、
デザイン、特許の分野では格段の違いがある。
日本の工場では、表に出せずにアップル向けラインを動かしてきたが、
値下げ圧力も強く、「毒リンゴを食った」とまで言われた。

シャープは技術力は高いとしても、
液晶で成功したノウハウはもはや通用しそうにない。
中小型液晶は、PCに置き換わるスマホやタブレットの流行で、
中国勢・韓国勢を始め競争が激しい。
技術を真似されて大規模生産されれば、
規模に劣るシャープは太刀打ちできない。
かつては、日本メーカーが新技術を開発して世界で主導権を握れば、
数年間は優位だった。しかし、今では
その優位はごく短期間になりつつある。
意思決定の速さ、巨額投資は、中国・韓国勢の得意とするところで、
日本の中規模メーカーでは難しい。
「自分がアップルの経営陣だったら......」
かつての田村が言った言葉を思い出した。
政治家にロビー活動をして、TPPで投資に関して
「国内企業の買収には、政府は関与しない」と付け加える。
そうしてシャープやソニー、電子部品会社等にTOBをかけるのだ。
買収したら非上場にして解体し、必要な部門だけ取り入れ、
不必要な部門は売却する。その合計価値は
上場時の時価総額より高くなる可能性が高い、と。
多くの日本人が怒りそうな案だが、
「資本主義とは、そんなものだよ......」
従業員を第一に考えるような企業は「上場しなくていい」との意見だ。
日本では、ROEを高めるための自社株買いや、
株主を満足させるための増配に躍起だ。
モノ言う外人株主は、日本人のように大人しくはない。
「言うこと聞かなければ、叩き売ってやるぞ!」
位は、平気で言うだろう。

相場は19000円手前で足踏み状態となった。
週末の米2月分雇用統計が注目されているので、
参加者のポジション調整も進んでいるのだろう。
更にMSQも控え、先物主導の荒れた相場になる可能性もある。
個人の利食いも多く出そうだが、買い手は日銀ETF、
下がったところはGPIFを始めとする年金筋もいて、
容易に下がらない展開となりそうだ。
「高値を追えるのは、出遅れバリュー株くらいかな......」
今更、ソニーや薬品を買っても仕方がない。
来期予想PERベースで株価が高すぎる銘柄は、要注意だろう。
先高感は強いが、どうせ5月から6月にかけて、
大きく調整する可能性もある。高値づかみだけは避けたかった。
金曜日の夕方、事務所で着替えていると三浦が話しかけてきた。
「3月末で辞めることにしました」
「例の資産運用かい」
「はい。リスクはありますが、死ぬ気でやってみます」
「そうか。頑張れよ」
「神谷さんには、色々教えてもらいました。感謝してます」
「何かあったら連絡しなよ。少しは手助けできるかもしれない」
田村のような専門家もいるし、難解な相場でも力になれるだろう。
「最初が肝心だからな。損を出しても焦って取り返そうと思うなよ」
「はい。その辺は分かっています」
田村の言うには、ファンドマネージャーの性格には、
向き不向きがあるらしい。常に周りの目が気になる者、
独善的で熱くなりやすい者は全くの不向きらしい。
「柔軟性のない奴は、生き残れねえよ」
とのことだ。

よくあるパターンが、気に入った銘柄を多く買い込んで、
逆に下がってしまうケース。プロのファンドマネージャーならば、
1銘柄の保有制限等のルールが確立されているが、
アマチュアの投資家は、ついナンピンに走ったり、
腰が引けてズルズルと引きずったりする。
見通しが変わったのならば、どこかで見切る覚悟も必要だろう。
その点、三浦は柔軟に立ち回れそうだった。
「三浦は向いているかもな......」
週末は、例の海岸沿い温泉で昼飯を食べた後、
バスで港町まで行ってみた。
津波で流された終着駅は、今月にようやく復旧するらしい。
駅周辺は整備されたが、周囲はまだ地ならしの工事が続く。
太平洋に面した入江は、どこも甚大な被害を被った。
山沿いに家が建ち始めているが、今後数十年は、
海に近い平地には民家が建たないだろう。
駅のそばには、立ち寄り湯もできるようだ。
「もう一度、津波がきたら......」と思ってしまうが、
地下のプレート同士の衝突が起こってエネルギーが分散すると、
当面は安定するのだろう。しかしまた、100年後位には、
再びプレート同士のひずみが溜まり、地震となって現れてしまう。
生き物のように地殻変動が続く以上、避けられないことだ。
市場も同じで、量的緩和が続けばどこかで行き過ぎが生じる。
国債が大量に発行されて、中央銀行が国債を保有し続けると、
市場参加者が「これ以上もたないだろう......」と見切った瞬間、
大掛かりなトリプル安に見舞われる可能性もある。
「はたして、何年後なのか......」


今回で、「派遣トレーダー2015」を終了します。


<免責に関して>
当掲載内容には十分注意を払っておりますが、
内容の誤り及び情報に基づいて被ったいかなるトラブル、
損失、損害については、当方は一切の責任を負いません。
ご利用は、自己の責任において行われるものとし、
当方は一切の責任を負いません。
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by nkmrnkmr | 2015-03-13 11:46 | オプション小説

派遣トレーダー2015(9)

2月23日の週は、先物主導で戻り高値を試す展開となった。
ドル円も再び120円台を目指してきた。
ギリシャに対する4ヶ月のつなぎ融資が決定、
目先の不安が解消したことが大きい。
日経平均は2007年の高値18200円台をあっさり通過し、
18500円まで突き抜けた。
「いったい、どこまで買われるんだ......」
世の中にテクニカル分析を行うものは大勢いるが、
基本的にチャートは信用していない。
過去の値動きは参考にする程度だ。
テクニカルについては、以前に
金融市場に詳しい田村と議論したこともあった。
「チャートで分かれば、苦労はいらないさ......」
「信用できないということですか?」
「唯一テクニカルで有効なのは、オシレータ系だな」
「買われすぎ、売られすぎのサインですね」
「俺が見るのは、騰落レシオ位か......」
その騰落レシオは週後半に140台に上がってきた。
「上昇が続いても、140台に入れば勢いは収まるさ......」
ということらしい。
相場の上昇に伴い、IVも期先中心に上昇してきた。
「どこかでCALLを叩き売ってみたいが......」
田村の言う騰落レシオ140台が一つの目安になるかも知れない。
木曜日は近くの作業場で三浦と同じ組になった。
「株価が上がってきましたね」
「勢いがつき過ぎているのが気になる......」
「スピードが速すぎるということですか」
「そうだな。外人の先物買いと証券会社の自己売買が主導なら、
 相場が一服したら、奴らは一気に外してくるぜ」

3月に近いが、外での作業は寒い。
「もうすぐ、311の震災の4年後ですね」
「ああ、津波さえなけりゃ、ここも変わっていなかったんだろうな」
海岸沿いは、ほとんど津波に飲まれ、更地にする作業が続いている。
地盤沈下も多く、元の町並みに戻すのは不可能に近い。
沖に堤防を作っても、彩度30mクラスの津波が来れば、
ひとたまりもないだろう。
「しかし、ここの人達は、また海岸沿いに家を建てるんですかねえ」
「住む家は高台で、職場は平地でいいと考えるんだろうな」
しかし、何十年かすると、生活に不便ということで
再び平地に家が建つのだろう。
明治、昭和の津波の後もそうなってきた。
「皆、歴史に学ばなきゃならないと、分かってるんだろうけどな......」
「結局、忘れるんでしょうね」
311大震災の翌週、メルトダウンリスクで株価が暴落、
日経平均は一時2000円近く売られる場面があった。
証拠金は跳ね上がり、PUT売りが原因で
自己破産を余儀なくされた者も少なくない。
立替金の急増に驚愕した証券会社は、この事件以来、
OP売り枠を大幅に縮小した。
しかし、この時から既に4年近く経った。
個人の新規参入者には、あまり深く考えずにPUTを売る者もいるはずだ。
「忘れた頃に、また何か起こるんだろうな」
911テロ、リーマン、ギリシャ・ショック、311大震災、
そして2013年の523ショックと、わずか1日で
PUT側IVが噴き上げたのは、16年間で5回にものぼる。
大外PUTを売れば勝率は9割以上だろうが、
1回の負けが極めて大きい。

2月27日は寄付きから荒れた。
寄付き直後、目を疑うような先物の派手な打ち合いで、
18800円台から18900円台で、瞬時に値が飛んだ。
報道では注文が間に合わず、時間差となったらしいが真相は不明だ。
IVも一時的に上昇、CALLも跳ね上がった。
しかし、市場が落ち着いた後は、週末ということもあり
徐々に売りに押された。
「よく分からんが、目先の天井か......」
騰落レシオも高く、短期調整の可能性が高かった。
次週の米雇用統計までは調整するとしても、
SQにかけては徐々に買いが優勢と思った。
例年、3月決算と来期業績への期待から、
3月末から4月末にかけて、株価は上昇するケースが多い。
今年に限れば、6月に米利上げとギリシャの融資期限に当たりそうで、
その前の高値は絶好の売り場所となる。
4月から5月は、それを見越したファンド連中が
売りに回る可能性がある。
5月末は欧州系ファンドの半期決算で、商品先物も含め
大がかりなポジション調整の可能性もありそうだ。
特に原油先物は、まだ買いポジがたまっていて、
高水準の原油在庫も考えると、安値を更新する懸念がある。
いくらPERが低いとはいえ、資源株はとても買う気になれない。
昼間に、三浦が「商社株はどうでしょう」と聞いてきた時も、
とても推奨できなかった。総合商社は、
今や世界中の資源に投資する投資会社のようなものだ。
資源価格の下落は業績を直撃する。
中国はじめ、途上国の成長率が鈍化しているのもマイナスだ。

週末は一人で電車に乗り、
例によって海岸沿いのホテルで温泉に浸かった。
昼飯を食い合わせて2千円程度なら十分だ。
露天風呂で海を見ながら、3月相場のことを考えた。
3月決算の期待は強く、来期の業績期待もある。
海外発の売り材料が出ない限り、3月末は高いだろう。
押した場面では、割安株の押し目買いで良いと思った。
問題はどこで利食うかだ。
「やはり、5月初旬までだな......」
米利上げやギリシャ問題、ファンドの半期決算を控え、
6月にかけては世界的に下押しの場面がありそうだった。
風呂から上がってスマホを見ると、三浦からメールが届いていた。
「では、自動車部品株はどうでしょう」
その後に、銘柄コードがいくつか並んでいた。
「それも際どいかな......」
自動車といえば、トヨタやマツダ等株価が絶好調の銘柄もある。
しかし、将来的に電気自動車が主流となり、エンジン部品はじめ、
先行き不要となりそうな部品も多そうだ。
ファンド始め機関投資家も、その辺に懸念を感じており、
割安でも買ってこないのだろう。
「自動車業界は、相当変わりそうだな......」
かのアップルもグーグルもITと自動車を結びつけて、
将来の収益源にしようと企画している。
ここ数十年はネットも何もかも米国が発祥である。
ビジネスのしやすさ、規制の少なさ、資金の出し手の存在等
全ての面で米国が適しているのだろう。
規制の中で安住している勢力の多い日本では、
将来も世界的なビジネスで主導権を握れないのだろう。


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by nkmrnkmr | 2015-03-06 10:53 | オプション小説

派遣トレーダー2015(8)

2月16日の週は18000円台からの開始となった。
ギリシャ問題が注目されているが、
つなぎ融資が実施されるのかどうか、週末まで分からない。
しかし相場は、楽観ムードに溢れており、
欧州株は堅調で南欧国債利回りも低いままである。
ギリシャのユーロ離脱が現実化しても、
スキームはできているとの指摘もある。
「といっても、揺さぶられるはず......」
ギリシャがいずれユーロを離脱するとの観測も根強い。
既にいくつかの中央銀行は、
来るべき日に備えた準備を始めているようだ。
そんな不安をよそに、市場は世界的に株価が堅調だった。
特に、量的緩和に入ったユーロ諸国が顕著で
DAX指数は11000近くまで上昇した。
米国はギリシャを懸念しており、
ユーロ側に「上手く収めるように」と伝えているらしい。
このあたりも市場関係者に伝わっているのだろう。
大手ファンドは地獄耳の連中も手なずけている。
米国もこんなギリシャ問題で、
利上げを前にした微妙な相場環境を悪化させたくない。
米国は日本よりはるかに株価に敏感だ。
個人資産に占めるウエイトは高く、
企業経営者のボーナスもストックオプションが基本だ。
株価を下げるような政策をとれば、選挙結果に響いてくる。
ただでさえ現政権の民主党は劣勢だ。
政府もFRBも、株価を下げずにどう利上げ局面を迎えるのか、
打つ手の難しい時期に来ている。
強気ムードが支配する中で、三浦もやや戸惑っているらしい。
「ギリシャやウクライナは関係ないんですかね......」

水曜日は立石のおやじと、周辺の地域に土砂を運んだ。
もう何度も通った道路だが海岸線の至る所に、
津波の残骸が残っていた。
「この先の町はなあ、俺の知り合いがいたんだよ」
「どんな方ですか」
「そいつはなあ、責任感が強い奴さ。
 地震の後に、奥さんとさっさと逃げりゃいいのに、
 近所の年寄りを一緒に連れ出そうとしたんだ」
「地震が来て津波まで、30分程度ですよね」
「ああ。どうしても動かねえ婆さんが、やっと腰を上げた時、
 津波が来たんだ」
「亡くなったんですか」
「そいつは近くのビルに上って何とか助かったが、
 婆さんを連れた奥さんが津波に呑まれたんだ......」
「やりきれないでしょうね......」
「奴は言ってたさ。かみさんには可哀想なことをしたが、
 俺はこれを背負って生きていくしかねえんだ、と」
「最近は会ってないんですか」
「まだ生きてると思うが、どこにいるか知れねえ......」
地震の後、急いで逃げた人が多い中で、
近所の人を何とか逃がそうと、
危険を顧みずに格闘した人もいたのは事実だ。
「世の中は、身勝手な奴が多いけどさあ、
 奴のような人間が減っていくのは寂しいことだな......」
「そうですね」
人間は忘れ易い生き物なのだろう。
明治、昭和と二度の大津波にのまれながら、
三陸の海岸線はいつのまにか建物が密集した。
避難場所に指定された場所も、いくつかは大津波に飲み込まれた。
「地震が起これば、30分で大津波が来る!」
年寄りからは何度も聞かされたはずだが、
「ここまでは来ないだろう......」と安心しきったケースもある。

「俺の知人が言ってたんですが、
 周囲と同じ行動を取って安心する態度は、
 日本人の欠点らしいですね」
そう、金融に詳しい田村がよく言ってた。
「それが安心だからじぇねえか」
「立石さんもそう思いますか」
「俺らのように頭の悪いものは、誰かに指示されなけりゃ、
 どうしたら良いか分からねえよ」
田村の言葉には続きがあった。
「だが、周囲と同じことをしてたら、
 相場も金儲けも上手くいかないさ」
相場が一方的に動くなら、それに乗る手はあるが、
梯子を外されると終わりだ。右往左往して、
万年強気のストラテジストの言葉等を信じて、
ナンピンを入れたりする。
他人の言動に影響を受けやすい者は、
少なくとも相場の世界では、勝ち組に入ることはないのだろう。
日経平均は木曜日にはリーマン前の高値を抜き、
1万8300円台に入った。
日経平均の来期予想EPSは1300円程度で、
PER15倍として株価は19500円となる。
3月末から決算発表時期の5月初旬には、
2万円に向かう展開も予想される。
今の状況では、18000円台前半で売り向かうのは、
リスクがあるかもしれなかった。
金曜日は三浦と一緒の作業だった。
低PER、低PBRで株式投資を始めたらしい。
「しかし不思議ですね。
 なぜ極端に低いPBR銘柄が放っておかれるのか......」
「業種に魅力がないか、時価総額が低すぎるか、
 IRに消極的か、多分どれかだな」
PBRの低い業種としてはゼネコン、地銀、
あまり注目されない機械系や材料系等がある。

「業種は分かります」
「でも、業種に魅力がなくても、再編で注目される可能性はあるな」
地銀等はそうだろう。
元々地方の銀行は多すぎるとの指摘があり、
経営統合が徐々に進んでいる。
有力地銀が弱小地銀を飲み込むケースも見られる。
「時価総額が低いと、買い手が付かないのですか」
「100億円以下だと機関投資家が買いづらい。
 出来高が少ない銘柄には、投信や外人は手を出さないよ」
実際に、時価総額が20-30億円の銘柄で、
彼らのシェアが高い銘柄はほとんど存在しない。
「確かに、いくらPBRが低くても、見向きもされていないようですね」
スマホで銘柄をチェックしながら言った。
「オプションはどうですか。ヘッジに使いたいと思うんですが」
「急落ヘッジは、期近のクズPUT買いから始めると良いんじゃないか」
「理論も勉強すべきですかね」
「ああ、EXCELに計算式を組み込んで、
 シミュレーションできるようになることだな」
「週末にやってみますよ」
「過去のボラティリティは、大証や人気ブログに出てるよ。
 大阪大学の金融センターのHPも参考になる」
「家で見てみますよ」
オプションはEXCELでのデータ検証と、シミュレーションが欠かせない。
過去の経験がモノを言うので、初心者がいきなりSSを組んだり、
大外PUTを何枚も売るのは、まず勧められない。
「最初は、OTMの短期売買から慣れることさ」
「ヘッジだと、外側のPUT買いやCALL売りということですね」


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by nkmrnkmr | 2015-02-27 11:02 | オプション小説

派遣トレーダー2015(7)

2月9日の週に入った。
週末の米国1月の雇用統計は、予想以上の強い数字となった。
11月と12月分も大幅な上昇修正で、
誰もが米国雇用情勢の強さを思い知ったようだ。
となれば、利上げの前倒し観測が出てくるのは避けられない。
株式市場も引けが近づくに連れて売りが出てきた。
NYダウは結局、前日比マイナスでの引けとなった。
しかし為替の方は素直にドル高に振れた。
日経平均も今週は18000円に近づいてきた。
「悪材料はあるが......」
ギリシャ問題、ウクライナ、イスラム国と懸念材料はあるにせよ、
大勢には影響がないということか。
あるいは、ショート筋の買戻しが優勢ということであろう。
「来期の業績予想は、強気が多いみたいですね......」
最近やけに株に詳しくなった三浦が言った。
「今のところは、今期の日経平均EPSは1100円強か。
 来期に10%近い増益を織り込むとするとEPSは1200円だ。
 PERが15倍として18000円か」
まあ、そんなところだろう。
18000円は特に割高でもなさそうだ。
「でも2007年の高値を本当に抜けますかね」
「相場を動かしているのは、外人と日銀・年金だからな。
 奴等が買ってくれば、節目なんか目じゃないさ」
「外人は、先物も大口で売買するみたいですね。
 手口を見てそう思います」
「そうだな。今は某欧州系のシェアが極端に高いしな」
「こんな奴等が大量に注文を出せば、どちらにも動きますね」
「そうだ。特に欧州系A社には要注意だよ」
「A社は時々、数千枚単位で傾けますね」

週末が近づくに連れて、日経平均も徐々に上がってきた。
翌週からは、ギリシャ問題が熱を帯びてくる。
左翼政権は、できれば債務を帳消しにして、
公務員の復職や年金の増額を目論んでいる。
「そんな虫のいい話が通るのか......」
世界中の誰もがそう思っているが、当事者は本気だ。
本気でそう言わなければ、選挙では勝てなかっただろう。
国民も本音は無理筋と分かっているが、
あわよくば独の譲歩を引き出せるかもしれないと、
期待しているのか。
2月10日の夜は、立石のおやじから飯に誘われた。
三浦も誘うと「ちょっと、予定がありますので」とかわされた。
2人で例の小汚い居酒屋に向かった。
立石の仮設暮らしも3年以上になった。
「他に移っても、仕事や家があるわけじゃあないしな......」
当分はここに留まるつもりらしい。
1時間程度飲み食いした後に、アパートに戻ろうと歩いていると、
三浦が背の高い痩せた男と歩いているのが見えた。
(めずらしいな)
この辺に知り合いがいるとは聞いていなかった。
2人は駅に向かい、別れ際に三浦が頭を下げるのが見えた。
(何者だろうか......)
休み明けの2月12日、ドル円が120円を突破したことで、
日経平均は18000円に達する動きとなった。
円安&日経平均買いはいつもの光景だが、
こういう場合は必ず裏にファンドの動きがある。
昨年来、グローバルマクロ型ファンドの運用成績は必ずしも良くない。
更に原油安で痛手を被ったファンドも多く、
どこかで巻き返しを図りたいところか。

三浦に10日の夜のことを聞いてみた。
「前から知ってる人で、実は借金があって......」
「その人から借りているのかい」
「ええ。でも意外と自分の事を買ってくれてるようで、
 一緒に仕事をやらないかと誘われてるんです」
「仕事って?」
「資産運用の手伝いです」
「金融機関の人でもなさそうだが......」
「ええ......実はサラ金の裏の運用部門みたいです」
「ちょっと危ない仕事じゃ......」
「ほとんど、大丈夫らしいですが」
「ほとんど、ってのも気になるな」
「自分の経歴じゃ真っ当な金融機関の運用は絶対無理ですし、
 やるのも手かなって、思ってます」
「こんな作業より、役に立つかもな」
甘くはないだろうが、運用の仕事で得るものもあるだろう。
この男自身で決めることだ。
「で、いつから始めるんだい」
「もう少し考えて見ますけど、4月からにしようかと......」
「本業でやるなら、オプションなんかも勉強するといいよ」
「ええ、先物やオプションも準備するつもりです」
「三浦がいなくなると、寂しくなるな」
「神谷さんはいつまで働くんですか」
「俺は、しばらく続くな」
「そうですか」
「昼間体を動かして、夕方以降に取引するのが、性に合ってるよ」
「その人が、もっと人を増やしたいとも言ってました」
「俺はいいよ。運用で人に指図されるのは好きじゃないから」
サラ金の裏で、どういう運用するのかは知らないが、
金融機関系のファンドマネージャーのように、
ベンチマークのTOPIX以上の利益率を目指すのだろうか。

日経平均は週末の13日にかけて、
18000円に突っかけたが弾き返された。
外人買いと個人の売りの攻防だろう。
当面は、2007年の高値18250円レベルが目標だが、
欧州情勢が落ち着いてくればあっさり抜ける可能性もありそうだ。
ユーロ財務相会合ではギリシャ問題が焦点となる。
同国政権としては、国民に公約した以上、
財政規律の枠組みを変える必要がある。
ユーロ側はギリシャの放漫財政が復活することへの危惧がある。
落とし所が見つかればいいが、
ギリシャが余りに強く主張するようだと、
独が拒否する可能性もある。
としても最終決着までには時間がかかりそうだ。
前政権でも、数ヶ月かかった。
その間、相場は一喜一憂するのだろう。
オプションは13日にSQを迎えた。
「ようやく、5月限が取引できるか......」
権利行使価格が125円刻みになって以来、
期先の板が極端に減った。マーケットメイクしていた外資系が、
銘柄の多さに根を上げたのか。
SQの週明け後は期近が売られ、
IVの比較的低い期先が買われるケースがある。
早速、4月売りと5月買いでポジションを組んでみた。
万一の急変動に備えて、3月クズでヘッジをした。
問題は現物株の方だった。
昔のようなユニクロトレードが復活すると、
バリュー系が放置されて非常にやりづらくなる。
今の相場は、上昇株と下落株が妙に入り乱れていて、
動きをつかむのが難しい。
「しかし、割安を丁寧に拾えば、大丈夫だろう」
低PBR、低PER中心に、買い増しを続けた。


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by nkmrnkmr | 2015-02-20 11:41 | オプション小説

派遣トレーダー2015(6)

2月に入った。
相場はギリシャ不安、原油安に揺さぶられながらも
ユーロの量的緩和から株式相場は底堅い動きとなった。
イスラム国の人質事件が日本を揺るがしていた。
結局、二人は殺害されたようだ。
イスラム国を取り巻く情勢は複雑だ。一見すると、
アルカイダ系の過激派が勝手に国を名乗っているようだが、
背景はそう簡単ではない。
フセイン政権が崩壊した後、米国の作ったイラク暫定政権は
人口が最大のシーア派主導である。
スンニ派、クルド人は脇に追いやられた。
戦闘で捕まったアルカイダ系(スンニ派)の過激派と
旧フセイン政権の軍・官僚幹部が収容所で親交を持ち、
政治的に空白地帯となったイラク北部とシリア北部を武力で制圧し、
国を名乗っているのが真相らしい。
インターネットを使ったリクルーティングや軍事訓練、
国内統治も旧イラク高官の主導によるものだろう。
「日本への脅しも、彼らの知恵によるものか......」
平和ボケした国民がこのような脅しに弱いということは、
日本を知る旧フセイン政権の官僚の知恵だろう。
相場や国際情勢に詳しい田村によると、
「奴らの攻撃対象は、あくまで米英だよ」
フセイン政権を倒して、アルカイダ幹部を殺害した国が、
あくまでテロの主要な対象なのだろう。
「おどおどして海外旅行をためらう日本人は、ピエロのようなもんさ......」
とのメールが返ってきた。
「今後、どうなりますかね」
「連合軍+クルド人とイスラム国の争いだ。
それにシーア派のイランも連合国に加わってるな」
昨年末には、イランがイスラム国を空爆した。

相場の方は、イスラム国問題はどこ吹く風で、
17500円中心の堅調な展開となった。
10-12月期の決算発表が続出しているが、
業績が予想以上の好数値となった銘柄が、
急騰する反面で、予想以下の銘柄は大きく下げる場面もあった。
原油安・資源安で商社株、資源株には逆風だ。
また、日本国債利回りは一時0.20%を割り込んだが、
0.40%近くに上昇した。追加緩和以降、
大きく買われたREITは、まとまった売り物が出た。
中には高値から2割以上下がった銘柄もあった。
それらREITは少し拾うことにした。
「JGBの利回りは、これ以上上がらねえよ......」
同僚の三浦も株価が気になるようで、ことある毎に話しかけてきた。
「堅実なのはPBRですかね」
確かにそれはある。しかし、B/Sに全てが
正確に時価評価で記載されているとは言い難い。
「土地や建物、のれん、繰延税金資産等の評価だな。
これで大きくBPSが変わる可能性があるぜ」
「なるほど、もっと調べてみますよ」
「それと、保有している非上場の証券だな」
「含み益の可能性があるという訳ですか」
「そうだ。公開すると何十倍にもなるケースもあるよ」
最近では、アリババ株を持っていたソフトバンクがそうだ。
20億円で出資したアリババ株は、何と公開で4000倍になった。
ソフトバンクの含み益は、8兆円という膨大な額になった。
東証が大証と経営統合した時は、旧東証株を抱えていた証券会社は
軒並み数十億円規模の含み益が出て、
売却による特別利益を計上するケースが続出した。

木曜日と金曜日はトラックで北上川沿いの作業場に材木を運んだ。
運転した立石のおやじが
「せっかくだから、海沿いを走ってみるか」と遠回りをした。
例の温泉ホテルを過ぎ、山間の道を抜けると目の前に太平洋が広がる。
海沿いの集落は、津波の傷跡が残っている。
「この辺は、直撃されたんだよなあ」
住民も再度の襲来を懸念していて、
小高いところに新しい家が立っていた。
「ひでえもんだよなあ......」
このおやじも近くの出身だけに、身にしみているらしい。
「直ぐに逃げなかった人も、多かったんですよね」
「ああ、家族を心配して家に戻ったところをやられたとか。
そんな話がいっぱいあるよ」
地震がきたら、津波も来るから一目散に逃げろ!
が徹底されればとも思うが、肉親や親しい人が気になるのは仕方ない。
北上川の河口近くまで来た。
このあたりは壊滅的な打撃を受けていて、
田畑はさら地のままになっている。
「この信号の向こうに大川小学校があるよ」
せっかくなので建物まで行ってみた。
多くの花やお菓子が置かれている。
「子供達も可哀想になあ」
立石の親戚の子供も犠牲になったらしい。
「すぐに裏山に逃げりゃあいいものを......」
先生達は長い相談の上、ようやく避難し始めたところを津波が襲った。
「市の教育委員会は逃げまくってるそうじゃねえか」
市は釈明に追われたが、子供を失った親達の怒りは収まらない。
「結局、日本人は危機感が薄いんですよ」
長年平和が続くと、危機意識は遠のいてしまう。

金曜日の夕方、着替えていると三浦が話しかけてきた。
「このレベルから買っていいですかね」
「個別株は決算発表で動いているが、上値は追いたくないな」
「PBRの低い銘柄は少なくなってきましたね」
2012年冬以降、株価は上昇を続けているため、
割安株は確実に少なくなっていた。
PBRの低い銘柄もあるにはあるが、将来性に乏しい業種や、
資源安のあおりで売られた商社、ゼネコン・不動産の一部あたりだ。
「PERも見てるんですが、極端に低い銘柄はどうなんでしょう?」
「ネットの情報なら、今期予想PERと思うが、
特別利益まで含むものも多いからな」
「なるほど」
「それを除外した来期の予想PERで計算し直すんだな」
「やってみます」
「それと、優先株を発行している会社は、
それらを含めないPERが出ているケースが多いので要注意だな」
「はい、分かりました」
銀行株等で優先株を発行しているところが多い。
しかし、単に普通株だけでPERを出すと、極端にPERが低くなる。
ネットの書き込みでも「割安だ!」と出ているが、
実際は希薄化も含めた計算が必要だ。
そんな銘柄の買い材料は、優先株の買い戻し&消却である。
現金の支出を伴うので自己資本比率や流動比率は悪くなるが、
潜在株数が減るのでEPSは上昇する。
「分析したら買ってみて、値動きを追うことだよ」
個別のニュースや他社の材料で反応することもあるが、
辛抱強く時間をかけて待つことだと思う。
「バフェットの投資手法と同じさ」


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by nkmrnkmr | 2015-02-13 14:22 | オプション小説

派遣トレーダー2015(5)

週末の1月25日は、例によって家の近くで昼飯を食った。
うどんをすすりながら、例のマスコミを賑わしている
イスラム国の日本人捕虜の記事を見た。
「どうも、腑に落ちない......」
経歴がやや不透明な湯川氏の軍事会社設立もそうだし、
国際的ジャーナリストの後藤氏が、湯川氏救出のため
世界一危険な地帯に足を踏み込むのも、
いくら知人とはいえ無謀すぎると感じた。
ましてや、シリア北部はアサド政権、イスラム国やクルド人が
抗争を続ける危険極まりない地域だ。
「表に出ない事情も、あるのだろうか......」
裏読みのできる人なら、まず疑問に思うだろう。
読み筋のひとつは、後藤氏が何らかのミッションを請負い、
湯川氏の救出に向かったという説。
出産したばかりの妻子を置いて危険地帯に向かったのだから、
可能性としてはあり得る。ミッションを授けたのは、
大手マスコミか政府筋というのも納得のいくシナリオだ。
しかし捕虜になるに及んでは、委託元の責任を問われるのを恐れ
依頼者は沈黙を守っているのかも知れない。
湯川氏が拘束されたのは昨年秋であり、その後に後藤氏に
高額でミッションが下った可能性は否定できないように思う。
イスラム国はイラク北部の油田占領を武器に、
トルコへ原油を密輸することで豊富な資金を誇ってきた。
兵士は世界中からリクルートしているようだ。
中東や欧州の貧困層が応募するのも無理はない。
失業率が高く、物価が日本の数分の一の国で、
月間十万円の給与を提示されれば応じる者も多いだろう。

1月25日はギリシャ選挙の日だった。
結果は予想された通り急進左派が圧勝、
連立政権が誕生することになった。
月曜日は、仕事の合間にスマホでその記事だけを追っていた。
(ECB、IMFは債務削減に応じるのだろうか......)
ギリシャの選挙は、以前もそうだがポピュリズムが横行する。
誰もが「独の言いなりにはなるな!」
「債務は削減させる!」といって票を集めるが、
政権をとってユーロ側と交渉すると、
元々立場も弱いので上手く行くはずがない。
今回の政権で注意すべきは、ロシアの援助もちらつかせる点だ。
ギリシャは一応欧州に属するが、
地図を見ても分かる通りアジアとロシアに近い。
ユーロ誕生の時は、西側に組み込む意味もあり、
GSを使って財政基準に合格が出された。
しかし民族的にも宗教的にも、かなりの隔たりがある。
かつてギリシャの経済閣僚は独の閣僚向かって
「実は、ギリシャは税制が曖昧なのだ」と言い、
相手を呆然とさせたらしい。
タクシー運転手にしても収入は申告制で、いい加減なものらしい。
更には公務員の異常に多い国である。
彼らは緊縮財政により、年金も減らされて不満が溜まっている。
急進左派が伸びる余地は十分あった。
左翼政権だけに、独よりロシアにシンパシーを感じているようだ。
昼食後にスマホに見入っていると三浦が声をかけてきた。
「神谷さん、株価のチェックですか」
「ギリシャのニュースを追ってるんだよ」
「影響がありますかね」
「いずれ債務削減交渉が始まるからな。半年は振り回されるだろう」

「以前と違ってイタリアやスペインの国債利回りは上がらないですね」
「ああ枠組もできてきたからな。万一離脱となっても、
 世界恐慌まで行かないよ」
「そうですねえ」
「あんた、金融市場も見てるのか」
「ええ。株には疎いんですが、金融会社にいたことがあるんで、
 金利と為替はチェックしてるんです」
「そうか。じゃあ後は株と商品の動きが分かれば、
 いっぱしの運用者だな」
この週は、先週のECB量的緩和実施とギリシャ不安、
ロシア不安が交錯したが、株価は堅調となった。
日本企業の10-12月期決算は企業により大きく振れそうだった。
輸出株は良さそうだが、競争の激しい内需関係は
円安によるコスト増で、少数の勝ち組と多数の負け組みに分かれる。
麻生財務相は「利益が出ないのは経営者に能力がない......」
と言ったが、消費税増税と円安によるコスト増を吸収できず、
減益や赤字の企業もある。
東北でやってるような復興事業関係は、まだまだ良いだろう。
週後半になるとギリシャ情勢がやや危うくなった。
欧州投資家は、ギリシャ問題は南欧に波及しないと見て、
ギリシャ株・債券売りVS独株・債券買いを進めているらしい。
イタリア、スペイン国債は大きく買われてきたが、
さすがに1.5%以下の水準では売りも出るようだ。
独国債の買いはすさまじく、年利0.2%台まで低下した。
逆に日本国債は一時0.2%を割り込んだものの、
機関投資家の売りも出るようで0.3%台まで上昇してきた。
日独金利差逆転である。

三浦が相場の話をしたいようだったので、
週末31日の土曜日に前回行った海沿いの温泉に誘った。
三浦は車を持っていて、海岸沿いを通って温泉に向かった。
入江に入ると津波の直撃を免れていて傷跡は少ない。
「ここは、被害も少なかったようですね」
「太平洋に面してないからな」
「紙一重なんでしょうね」
ホテルで昼飯を食った後、温泉につかった。
眺めも良く、4年前に山の向こうで
津波による大惨事があったとは思えない。
「時間ありますか」
「どこか行きたいのかい」
「岬の端の方まで行ってみたいんですが」
ホテルから半島の端の方まで20km程度だ。
曲がりくねった道路でひたすら先を目指した。
途中に原発の建物が見えた。
海岸沿いはいたるところに津波の傷跡がある。
「このあたりは30mクラスの津波だったらしいですね」
「太平洋に面した場所はひどいな......」
ようやく灯台近くに着いた。目と鼻の先に大きな島が見える。
ここには神社があり、わずかであるが人も住んでいる。
フェリーも通っていて、信仰で訪れる人も多いらしい。
島全体が山で平地が少なく、津波の被害も限定されたのだろう。
帰りは相場の話になった。
「バリュー投資に興味があるんですが、
 何から勉強すればいいですか」
「指標を正確に計算することかな」
「PBR、PERあたりですか」
「そうだな。PBRは決算短信や有価証券報告書から
 資産を時価評価して再計算することだよ」
「なるほど」
「他ではEV/EBITDAかな」
「それも勉強してみますよ」


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by nkmrnkmr | 2015-02-06 12:06 | オプション小説

派遣トレーダー2015(4)

1月16日は日経平均は一時16500円台まで売り込まれた。
WTIは45ドル前後だ。仏テロの影響もあり
世界的なリスクオフの流れが続く。
週末は相変わらず寒かったが、なんとなく電車に乗ってみたくなった。
最寄り駅から海岸線をしばらく走った。
至る所に津波の傷跡が見えた。
地盤沈下で、ほとんど手付かずの場所もある。
このあたりも20mクラスの津波が襲った。
入江沿いに入ると、海岸沿いは建物が並んでいる。
津波が直撃しなかったため、被害は小さかったようだ。
終着の無人駅を降りると目の前には、その入江広がっていた。
海水は透明で、民家も多く立ち並んでいた。
「津波が直撃しなかったからだろうな......」
しかし、直撃した湾岸は悲惨だ。
この終着駅から、もうひとつ先の駅が終着駅だったのだが、
津波が凄まじく回復に至っていない。
土曜日の昼間だったが、バスでその駅跡まで行ってみた。
さっきの駅と違い海岸沿いは建物が少ない。
地盤沈下もあり、住民も再度の津波を恐れているようだった。
実はここから、さほど遠くない場所に原発が存在している。
従来から老朽化が進んでいるとの指摘もあり、
ビジネス誌の危険度ランクでも上位に位置していた。
しかし、福島原発以上の津波を受けながら、
電源もかろうじて通じたこともあり、事故には至らなかった。
その辺の事情は、立石から何度か聞かされた。
「ここの原発は、地元の電力会社が管轄でさ。
 地元に根付いてたんだ。顔も知ってたから
 津波の時も皆が原発に避難したんだよ」

「へえ、原発内に避難した人もいたんですか」
と俺が聞いたら、
「地元に根付いてたってことさ」
東電の管轄なら、そうは行かなかったという意見もあるようだ。
東電の福島とここの原発の違いは、設置場所の高度だった。
原発は冷却水を必要とするだけに、
海面から高いほど汲み上げるコストがかかる。
低ければコストは小さい。
福島第一はコストを嫌って低くしたとの説があった。
「難しいところだな......」
東電も上場企業である以上、いかに低コストで利益を上げるかが重要だ。
米国のように株主利益に反する行動を取ったならば、
株主代表訴訟を起こす外資系ファンドも出てくるだろう。
逆に安全性を僅かでも軽んじた施策が
今回のような大惨事に繋がるケースもある。
そこの最終駅付近を少し歩いてみたが、
海水の匂いのするひと気のない道路を、時折車が通るだけだった。
先程の入江と違い30mクラスの津波は凄まじい。
ここに住んでいた人達は、数十年は恐れて民家を建てないだろう。
気がめいったので、来る途中に電車から見えた旅館で
一風呂浴びることにした。入江沿いの旅館は眺めがよかった。
ダメもとで女将に「このスマホに出ている料金で泊まれますか」
と聞いてみた。
ちょっと戸惑ったようだったが、「ええ。歓迎しますよ」とのことだった。
そのまま部屋に案内してもらい、改めて海を眺めた。
入江という位置が幸いして、この海岸沿いは被害が少なかった。
ただし、目の前に見える山の奥は太平洋に面していて、津波が直撃した。
「紙一重か......」

晩飯は海の幸を堪能できた。
たまには1万いくらの贅沢くらい良いだろう。
生活費は切り詰めているし、
スマホも旧モデルに格安SIMを差して使っている。
2Gで月千円だけだ。
ネット証券のアプリをダウンロードすれば、
先物OPは一通り取引できる。
この分野は、ずいぶん進歩してきたが、
業者には先物OPがスマホに対応できていないところもあった。
その点、業界首位のSBIはさすがに便利なツールを開発している。
寄付き直後のデータの戻りが遅いのが難点だが......
来週は材料が多い。日銀、ECB、ギリシャ選挙がある。
日銀は、さすがに見送りだろう。
一部で原油安からサプライズの追加緩和を期待する声もあるが、
あくまで少数派だ。黒田総裁は当初から、
緩和は小出しにしないと断言している。
ECBはさすがに量的緩和を導入するだろう。
昨年の秋からそう言っていてきた。
ここで延期したら、債券市場は急落だろう。
その辺の機微は、GS出身のドラギ総裁自身が
良く分かっているはずだ。
問題は、買い入れ対象の国債をどう決めるか、
規模をどうするかの2点である。市場を知っている総裁なら、
失望売りを招く施策は避けるはずだ。
となれば、少なくとも追加緩和を期待させる内容になるのだろう。
ギリシャは不安要因ではあるが、最近の市場の動きでは、
伊・スペイン国債は大きく買われていて、
ギリシャは株も債券も蚊帳の外だった。
徐々に、ギリシャのユーロ退場まで織り込み始めているのだろう。
「とすれば、来週は株価は底入れか......」

次の週が始まった。
相変わらず寒い中を作業していたが、
相場は思った通り上昇してきた。
金曜日には日経平均は1万7500円を回復した。
仕込んでいた現物株も何とか利食えるまで上がってくれた。
そんな時、スマホを見ながら昼飯を食ってると
若造の三浦が寄ってきた。
「神谷さん、株に詳しいそうですね」
「立石のおっさんから聞いたのかい」
「ええ、まあ......」
「あんたは、やったことないのか」
「素人が感覚だけで、やった感じでした」
「少しは勉強しとかないと、勝てないぜ」
「そうですね。上がっていたIT銘柄を買って、大きくやられました」
「バリュエーションで株価が正当化できないような銘柄は、
 利食いと損切りを決めとかないと危ないな」
「調べたんですが、PEGレシオではまだ買えるって出てました」
PEGレシオは、決算毎に数値の大きく変化する指標だ。
かつてITバブルの時に、株価を正当化しようと
米国の専門家が編み出した。
計算式はPERをEPS成長率で割って求める。
PERが30倍で成長率が35%ならば30/35<1でまだ割安。
問題は成長が鈍化した時で、
PEGレシオを背景に買われた銘柄は、間違いなく売られる。
「まず財務諸表の勉強から始めなよ」
「難しそうですね」
「大したことないよ。使う項目は限られるし」
表に出るEPSでは、今期予想にしても大きな特別損益が含まれたり、
正と負ののれん償却や貸倒引当金等の影響が大きかったりする。
情報会社によっても予想は異なる。
「要は、EPSを自分で計算してみることだよ」


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by nkmrnkmr | 2015-01-30 10:28 | オプション小説

派遣トレーダー2015(3)

週末は3連休だった。
年末年始からまだ1週間だが、やはり5日間も働くと疲れが残る。
外は依然として雪混じりで異様に寒い。
以前のようにアパートの近くに喫茶店もないし、
土曜日の昼に駅の近くの寂れた食堂に行った。
うどんや蕎麦程度で大したものはないが、
新聞が何紙かおいてあった。経済面では原油下落の記事が多い。
急落の原因はOPECが減産しなかったことだが、
需給が悪いことも重要だ。
かつて2008年に150ドル付近まで上昇したが、
リーマンショック後に一時40ドル割れまで売り込まれた。
今回は当時よりファンド勢の多大な買いポジションが溜まっている。
うまくない蕎麦をすすりながら、
「これは、家に帰って調べてみる必要があるな」
他では、フランスのテロに関する記事が多い。
仏はかつてアフリカや中東に植民地を持ち、
今でも中央アフリカ等かつての植民地で
政治的に不安定な国に軍隊を派遣している。
当然、政治的な係わりも多く、
亡命政権の多くは仏国内に拠点を持っている。
当たり前だが外人(特にアフリカ系)も多い。
日本はフランスといえば優雅な文化国を想像するが、
実際は警備体制も厳しく興ざめしたという話も聞いたことがある。
平和ボケした日本人には、かなりギャップを感じる国の一つだ。
ユーロ内では独に続く経済大国だが、失業率は10%を超えている。
アフリカ系や中東系に限れば、もっと失業者は多いはずだ。
不満を持つ若者が社会に絶望して、
イスラム国に加わる気持ちは分からないでもない。

冷たい風の吹く中でアパートに戻った。
早速、原油先物の建玉動向を調べることにした。
NY原油先物の大口投機玉は昨年6月末に約45万枚のピークを付け、
その時100ドル以上の高値をつけている。
そこから一方的に価格と買越し枚数が双方下がり続けていた。
今では価格は50ドル割れで、買越しは28万枚程度だ。
しかし、2008年のリーマンショック前よりも建玉は多く、
いずれ戻るとしても売りをこなしながらだろう。
「これは当分戻らないか......」
グローバルマクロ型のヘッジファンドも、気が気ではないだろう。
1年前は、独国債買vs南欧国債売、中国株売りvs東南アジア買い、
資源買い、というポジションがまだ主流だったと思う。
11月末、12月末といった決算期を経て
ファンドのパフォーマンスは悪いものも少なくなさそうだ。
とすれば、パフォーマンスに神経質な投資家は運用成績を見て、
次回改善しなければ解約売りを出すことになる。
それが12月から1月にかけてのポジション修正伴う南欧国債買い、
中国株買い、原油売りにつながった面もありそうだ。
「奴等がポジションを修正した後が面白そうか......」
1月後半から買って、売りは決算の出始める4月末、
と考えるのが妥当かもしれない。
週末を使って、バリュー株を調べてみた。
低PBR、低PERは2012年に比べてさすがに少なくなっている。
PBRが1以下、PERが10以下の銘柄は、
不動産系や資源系等の先行きにやや不安のある業種が多い。

総合商社あたりも、PERが低くて魅力はありそうだが、
世界中で資源投資を行っていてこの資源安の流れでは、
大きな特損を食らう可能性がある。
原油が反発すれば、JX等のエネルギー系も良いのだろうが、
当面原油が安い状態が続きそうな予感がする。
「なかなか、難しいな......」
それでも割安と思える中小型株を2-3選び、
週明けに注文を出すことにした。
問題はオプション市場だ。指数は売られてはいるが、
来期予想EPSを考えると、反発に転じる可能性は高い。
しかし、翌週は日銀、ECB、ギリシャ選挙と材料も多い。
ポジションを傾けるのは、その次の週からだろう。
13日の週は一進一退が続いた。値幅も大きく、
デルタを傾けるのはタイミングも重要だった。
そして市場を驚かせる出来事が起きた。
スイス中銀のユーロリンク廃止である。
その発表は突然だった。
スイスフランは対ユーロで3割以上の暴騰、市場は大混乱となった。
SF売りのポジションを持っていたファンドやFX個人投資家の
ロスカットが殺到、業者には大きな損失を抱え込むところも出た。
FXCMは2億ドル、米シティは1.5億ドルの損失と発表されている。
日本ではマネックスが1億円台の損失を計上した程度だが、
ニュージーランドでは破綻した業者も出た。
これは低金利のSF売りと高金利のNZD買いが流行していたためか。
ニュースを追っていくと、ユーロ圏では
低金利のSF建で住宅ローンを組むケースも多いらしい。
これだとSFが対ユーロで3割上昇すれば、
返済金が3割増しになってしまう。

「かつてのアイスランドと同じじゃないですか......」
前の職場の同僚でFX好きの若造からメールが来た。
アイスランドは2008年の金融危機の際、
国内銀行の巨額投資が災いしてデフォルトの危機に見舞われた。
アイスランドクローナは対ドルで半値以下、対ユーロでも暴落。
当時のアイスランドでは国内の高金利を嫌い、
ユーロ建で住宅ローンを組むことが流行、大問題に発展した。
「安易に金利に魅せられるからだ......」
金融に詳しい田村がよくそう言っていた。
「低金利で借りて高金利で運用するなんて投機筋だけだ」
リスクオンの時期ならば、利回りの高い投資先を求めて
高金利通貨買いが流行する。
しかし、高金利通貨は問題のある国も多い。
高金利政策で投資資金を集めていたアイスランド、
高インフレのブラジル・トルコ・南ア等だ。
世界的なリスクオフや国内事情が発生すれば、
叩き売られるリスクもはらむ。
「よほどのタイミングじゃないと買えねえな......」
その週はスイスフランの問題も起きたが、
ユーロリンク廃止と同時に利下げも行ったため、
欧州株は大きく上昇することになった。
現場の仕事は適当に済ませ、夜は銘柄探しや分析に使った。
オプション市場では、年明けの急落や来週の日銀会合、
ECB、ギリシャ選挙もありOP売りに傾けづらい。
が、どうしても売るとすれば大外の3Cか。
少なくとも、追加緩和は委員が1人交代する春以降で、
3月SQまでに20000円に達する可能性は限りなくゼロに近い。


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by nkmrnkmr | 2015-01-23 10:33 | オプション小説

派遣トレーダー2015(2)

2015年最初の週は、世界的に株価は下落した。
日経平均も夜間で一時16500円程度まで売られた。
今年は利益の出た投資家も多かったのか、
株価が上がらなかった銘柄には
12月の最終まで税金対策の売りが続いたようだ。
押し目買いの好機といえばそうだが、
決算が今ひとつで買い材料の出なかった銘柄が多いので、
ちょっと手を出しづらかった。オプションを始めてから、
証拠金に余裕のある時だけ現物に手を出しているが、
大型株は動かないので、もっぱら中小型株だ。
不動産の「パラカ」、金融の「あかつきF」あたりを仕込んだ。
オプションは、年明けは調整が出ると踏んで2Cと3Cのレシオ。
下は14000円台のカレンダー系とした。
海外で何か起これば16000円台前半まで突っ込む場面もあるが、
ECBや日銀も控えているので、ショート筋の先物買戻しも強力だろう。
為替もリスクオフの動きでドル円、高金利通貨も調整気味だ。
IMMの通貨先物ポジションを見ても、まだまだドル買いが溜まっている。
原油急落で商品系ファンドの閉鎖がささやかれている。
利益の出たポジションで埋め合わせをすることもあろう。

1月9日は米国雇用統計の発表だ。
夕方現場からマイクロバスで事務所に戻り、
さっさと着替えを終えて帰ろうとした時に、
たまに世間話をする老人の立石から声をかけられた。
「おう、神谷のあんちゃん。ちょっと付き合わねえかい」
帰りがけに地元の酒場で飲もうということらしい。
そばには20代だろうか、若い茶髪の男がたたずんでいた。
「3人でですか」
「ああそうだ。俺がおごるから1時間だけでもどうだい」
「まあ、1時間程度であれば......」
どうせ、一人で飯を食っても30分はかかる。
立石に付き合うことにした。
(雇用統計発表の10:30には帰れるだろう......)
連れ立って安酒場に向かう途中で、
「俺、三浦っていいます」若い男が声をかけてきた。
端正な顔で、一見思慮深いようにも見えた。
「神谷です。立石さんとは現場でたまに話す程度だけど......」
「俺もそうです。アパートに帰ってもコンビニの飯を食うだけですし......」
「なんで、この仕事やってんだい」
「ちょっと金が必要でして......」
若いなりに金が必要でもあるのだろう。
「でも、三浦のあんちゃんはしっかりしてるぜ。
 仕事が遅いやつの手伝いもするし」
立石が褒めた。
「早く終われば、早く帰れますから」若い男は謙虚だった。
その安い飲み屋は、駅の近くにあった。
周囲は寂れたパチンコやスナックもあった。
「まあ、ここの3人も何かの縁だ。乾杯しよう」立石が声を上げた。
狭くて小汚い店内には、同じような現場の労働者が何組かいた。

飲んでいると、つい仕事の話になる。
「この復興事業の現場のおかげで、仕事にあぶれずに済んだよ」
立石には元の仕事より良さそうだ。
「まだまだ仕事は続きそうですね」
海岸沿いの復興事業は相当長く続きそうで、
労働者が増えたため地元まで潤っているようだ。
居酒屋は8時前に切り上げた。
帰ろうとすると立石が
「もう1軒いいじゃないか」
「はあ、ちょっと取引があるので......」
「株かなんかやってんだったな」
「ほんの1杯だけなら」
10時までなら付き合えそうだった。
場末の安いスナックは驚いたことに3人入って一杯になった。
「飲み屋も繁盛していますね」三浦が呆れたようにつぶやいた。
現場の連中にとって、夜は酒を飲むことが何よりの楽しみだ。
「東京のババアまで出張してるって話だ」
東京で相手にされなくなった大年増まで、流れてきているらしい。
(これも復興需要のおかげってか......)
店内にいた2人のホステスは、どう見ても50代だろう。
その内の派手な服を着た方が、立石のお気に入りらしい。
「この姉さんは、昔歌舞伎町で働いてたんだってよ」
「よしてよ。昔の話なんだから......」
歳をとっても、目には妙に媚びた光があった。
現場のおっさん連中は50~60代が多い。
店の常連にするくらい、大して難しくないだろう。
「ここでしばらく働くんですか」女に聞いてみた。
「もう少し。でも地震や津波は怖いわねえ」
「大丈夫さ。今回でかいのが来たから、あと100年は来ないさ」
立石が胸を張った。

10時過ぎにアパートに戻り、急いでPCを立ち上げた。
指標発表前で市場には緊張感も漂っている。
10時半に数字が出た。失業率5.6%、新規就業者数も予想以上だ。
市場はすぐさまドル高、株高に振れた。
日経平均先物は100円程度上昇した。
「こんなものか......」
しばらく経つと雇用統計の詳しい内容が出てくる。
時間当たり賃金が伸びないのは気になるが
テクニカル要因ということもある。
それ以上動きそうになかったので、米国開始前に寝ることにした。
朝起きて、市場をチェックして驚いた。
予想外の大幅安であった。
「ここまで売られたとは......」
株価は史上最高値付近にある。多少の不安が出ても、
個人やファンド勢は利益確定に走りやすいのだろう。
特に今年から金融政策が大きく変わる。
日本と違い米国市場は金利に敏感だ。
金利が上昇すれば、資金は株から債券にシフトが進んでくる。
株価が一段と上昇するシナリオは、企業業績が好調である一方で、
低インフレで利上げが先送りとなるケースだけだ。
調べてみると、金融相場から業績相場へ順調に移行した例は少ない。
「とすれば、昨年以上の揺さぶりもありそうだ......」
日銀が追加緩和をすれば別だろうが、前回の5対4の可決を見ても、
早期に動く可能性は限りなくゼロだろう。
「3月限の20000円以上のコールは売りだな......」
裸売りはリスクが高いので、レシオを積み増すことにした。
万一の際は、高値で買い戻すか期近コール買いで凌ぐしかないが、
それを経験するのも悪くないと思った。


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by nkmrnkmr | 2015-01-16 10:38 | オプション小説

派遣トレーダー2015(1)

2015年になった。
俺は配属が変わり、岩手県に移っていた。
今年の年末は特に寒い。
地球温暖化と言われているが、この寒さは一体何なのだろう。
周囲の連中は
「年をとれば、北海道の安い土地でも買って住めばいいや......」
とか暢気なことを言ってるが、
北海道では死人も出るほどの寒波だ。
年末は新しく移った安アパートで、
どこにも出かけないで相場を見てすごした。
思えば1年前、欧州系ファンドが11月の安値から買い上がり、
まさかの2000円高で16000円半ば近くまで上昇した。
日本の単純な証券会社の連中は、
「すわ、3月末は18000円だ!」とか絶叫したが、
肝心の外人勢は個人のNISA買いに売りを浴びせ、
5月までは14000円台でうろうろしていた。
「日本の証券会社も、外人に振り回されてるだけじゃねえか」
と思わずにはいられない。
確固とした相場観も持たずに、上がればキャンキャンわめき、
下がればシーンと沈黙する。
2015年の相場を考えると、「米利上げ」「ECB量的緩和」
「日銀追加緩和」「中東、ロシア、中国情勢」といった材料が目白押しだ。
イケイケの専門家M氏や強気のD証券のいうように、
22000円を大きく超えることがあるのか?
日経平均の今期予想EPSは現時点では1100円で、
輸出企業の業績上振れを見込んでも1150円か。
来期の業績予想は、好調な米国経済の恩恵があるとしても、
予想EPSで1200~1300円か。
PERが13~15とすると、日経平均は15600~19500円となる。

しかし、専門家の予想は高値20000円以上と言う声が大勢だ。
「本気で言ってんのか」
以前の作業場で一緒だった田村にメールしてみた。
この男は証券市場に恐ろしく詳しい。
株だけでなくデリバティブや為替、国際情勢にも通じている。
こんな作業をやっている男ではないのだが、
個人には様々な事情もあるのだろう。
「前にも話したが、証券会社には顧客がついているからな。
 客に日本株や外貨を勧めてる以上、株高・円高になりますとは、
 口が裂けても言えねえよ」
との返事が返ってきた。
「まあ、商売である以上、調子が良いんだろうな」
かつて日経のサイトで、相場観を語るコーナーがあった。
リーマンショックが起こる前、
同社が資金繰り懸念から株価が下げ続けている時も、
「年末は16000円回復!」といった現実離れした暢気なコメントもあった。
リーマンショックが起きた時も、
「先進国の利下げで、株価は年末に14000円回復!」
とのコメントもあった。
この時も強気派が7-8割を占めていたと記憶するが、
中には「終わりの始まりか......」
と警戒する向きも少数ながらいた。
結果は少数派の通りで、株価は11000円から7000円まで急落した。
田村に言わせると、
「相場を語る連中で、まともな者はせいぜい1割だからな」
ということらしい。
証券会社のストラテジストにもなると、
マスコミでもっともらしく相場を語る必要がある。
鋭い相場観は部下や部内の識者に任せ、
いかに上手く語れるかが重要になってくる。
要は、口が回らないと務まらないようだ。

今、俺が移ったのは北上川の下流から少し離れた作業場だ。
この川も311大震災の時は巨大な津波が襲い、多くの人が亡くなった。
海岸線近くにいて30m以上の津波が来たらひとたまりもない。
言い伝えを覚えている人ならば、
「大地震があったら、直ぐに近くの高台に逃げろ!」
と逃げて助かったが、
「なあに、大丈夫だろう」とたかをくくった人もいたに違いない。
悲劇は多かった。中でも河口から5km程度内陸の
大川小学校の悲劇がその代表だろう。
地震後校庭に全校生徒を集めたまでは良かったが、
「どうしよう、こうしよう......」
生徒や保護者の不安をよそに先生連中の意見がまとまらず、
大勢の生徒が亡くなった。唯一生き残った先生は、
市の教育委員会が面会謝絶で誰にも会わさず、
今も亡くなった生徒の親達との確執が続く。
直ぐに裏山に逃げれば、生徒も先生も助かったのだろうが、
「道もない山で怪我をさせたら......」
「津波はここまで来ないだろう......」
との根拠のない希望的観測が多かったはずだ。
「日本人は、根拠のない楽観論が好きだからな」
これも田村が口にする言葉だ。
「全てのシナリオを冷徹に計算して準備するより、
 希望的観測にすがって皆で安心したい民族さ」
異なる意見を口にする異端者は、確実に嫌われる。
それでも明治維新、日清戦争・日露戦争までは上手くいった。
しかし日中戦争、太平洋戦争、バブル崩壊、
近年の輸出企業の世界市場での衰退、
いずれも冷徹な計算を軽視し、
「なんとかなるさ......」
「国が何とかしてくれるだろう......」
との安易な楽観論に乗ったからではないか。

仕事始めは1月5日からだった。
眠い目をこすりながら8時に職場に着いた。
知り合いは少ない。前の作業場の連中とは全て別れて、
年末から挨拶程度はする仲間ができた位だ。
マイクロバスに乗り海岸近くの現場に向かう。
津波の傷跡も残るが、海岸近くにも建物が随分建てられた。
「このへんは、30mの津波が来たんだよ」
立石という、地元出身の男がいった。
「俺の働いていた工場もこの近くだったんだが、
 根こそぎ飲み込まれちまった」
一時的に仮設住宅に避難し、まだそこに留まっているらしい。
「でもよ、復興需要とかで、また働けるのが幸いだった......」
三陸の海岸線は、どこもかしこも堤防作りや住宅建設で、
業者は人手不足で悲鳴を上げているらしい。
恐らくは、そのほとんどが税金だろう。
政府が国債を発行し、今では日銀が買い上げる構図だ。
国債の対価として市中にまかれたお札は、
回りまわって株や不動産、外貨に向かう。
お陰で株価は18000円に届いたしドル円も120円に達した。
立石のように仕事で恩恵を受けた者も多い。
「おっさんには、自民党で良かったな」
声をかけてみた。
「どっちでもいいよ。けど面倒見は前よりいいんじゃねえか」
「物価が上がったことがちょっとねえ......」
「そうさ。色んなもんが値上がりしてきて、何とかしてもらいてえよ」
「消費税も8%になったしな」
「反対に企業の税金は安くなるというじゃねえか。
 俺には分からねえなあ」
海岸近くには水溜りが多い。
地盤沈下で、潮が満ちると道路まで海水が押し寄せるようだった。


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by nkmrnkmr | 2015-01-09 12:18 | オプション小説